2011年11月29日火曜日

セインツロウ ザ・サード

セインツロウ ザ・サード
Saints Row: The Third/THQ/PS3

スティルウォーターを拠点とするストリートギャング、サード・ストリート・セインツは前作『セインツロウ2』の結末を受けてセインツ・アルター・グループを形成してブランド化へ走り、キャラクター・マーチャンダイジングなどを展開していたが、それはそれとしてやはりギャング行為もするということで銀行を襲撃したところ、それが国際シンジケートの銀行で、派手な銃撃戦の末に捕えられ、シンジケートの配下となって上納金を収めるように要求され、もちろん拒絶してシンジケートが支配するスティールポートへ乗り込み、シンジケートを壊滅させる、というプロットを背景にした箱庭型のアクション・ゲームで、基本的には町の中を自由に歩きまわり、ミッションやサブミッションをこなし、敵のギャングと抗争し、支配地域を広げていく。その範囲では前作とおおむね同じだが、今回は途中から敵が事実上の軍隊になり、空母や戦闘機が投入されてくるので、こちらも戦闘機を撃墜し、空母を撃沈することになる。そしてシステムがそれを保証しているので、戦闘機を撃墜し、空母を撃沈する合間に路上強盗や押し込みをすることもできる。
ゲームの導入部はすでに『スターウォーズ』のパロディであり、序盤のアクションは『シューテムアップ』からの引用になり、途中のミッションでは電脳空間に放り込まれて『トロン』をやり、そこで提供されるアバターはなぜか便器であり、ファンタジー系RPGのいささか嫌みなパロディもあり、ゾンビが大群になって現われ、マスクをかぶってプロレスをやり、ピンク色の巨大なディルドを振りまわして敵を殴り、衛星兵器で敵を爆撃し、ついでにバート・レイノルズと対面する。単にてんこ盛りというよりも、何かひどく混沌としている世界になっているのである。にもかかわらず、ゲームとしてのバランスはよく、豊富な選択肢もあって、プレイアビリティはかなり高い。リアリズムやモラルを気にしたいひとは『GTA』をすればいい、という思い切りのよい差別化がおこなわれているような気がする。スティールポートの町が単調で魅力に乏しい、店舗のバリエーションが少なくなり、店で売っている衣類もセットが増えて、前作に比べると組み合わせが単調になった、などの難点もあるが、全体からするときわめて上質なゲームと言うべきであろう。


Tetsuya Sato