2011年11月28日月曜日

わたしなりの発掘良品『遥かなる戦場』(1968)

遥かなる戦場(1968)
The Charge of the Light Brigade
監督:トニー・リチャードソン


軽騎兵旅団を指揮するカーディガン卿は知らぬ者のいないアホウで、インド帰りで自信過剰のノーラン大尉が噛みついてくると、とにかくそれが気に入らないのでノーラン大尉を謹慎させたり逮捕させたりしていたが、それが新聞ダネにされてスキャンダルを呼び、ノーラン大尉の直訴によってラグラン卿が調停に乗り出してどうにか事を収めた頃、クリミア戦争が始まるのでラグラン卿を総司令官としてイギリス軍がクリミアにわたり、多数の病人を出しながらロシア軍と交戦、やがてイギリス軍とセバストポリ湾のあいだをロシア軍が遮断するので、ラグラン卿はロシア軍の砲列の移動を阻止するために騎兵隊に進撃を要請するが、その命令を伝えたのがノーラン大尉で、命令を受けたルーカン卿とその配下にあるカーディガン卿とは互いをアホウと罵る関係にあり、そのことは現場でも変わることがなかったのでどちらがどちらともなく叫びたて、なんだかよくわからないままにラグラン卿の命令はロシア軍砲兵陣地への突撃命令と曲解され、カーディガン卿の指揮で軽騎兵旅団が突撃する。カーディガン卿がトレバー・ハワード、限界が近いラグラン卿がジョン・ギールグッド、ノーラン大尉がデヴィッド・ヘミングス。超大作である。『進め龍騎兵』(1936)と同じ題材を扱っているが(原題も同じだが、まずテニソンの詩があるので、これはそういうものであろう)、あちらがエロール・フリンならば、こちらはなにしろ監督がトニー・リチャードソンなので、きわめて批評性の強い作りになっていて、歴史的な状況は凝ったアニメーションで説明され、支配階級はおおむねにおいてアホウとして扱われる。話がクリミアに移るのは中盤からで、それまでは軽騎兵の訓練風景、厩舎、厩舎の背後の女たちの仕事部屋などが詳細に描かれ、戦争が始まると馬匹輸送船の内部、黒海の嵐による馬の損耗、カラミタ湾上陸、行軍、伝染病による兵士の損耗、野営地の設営と珍しい描写が山ほども登場する。戦闘シーンもよくデザインされており、クライマックスの突撃はかなりすごい。演出上の創意がややまとめ切れていないところに瑕疵が見えるものの、見ごたえのある映画になっている。 
遥かなる戦場 [DVD]

Tetsuya Sato