2015年12月31日木曜日

トポス(63) ヒュン、魔法玉を手に入れる。

(63)
 ヒュンとネロエは路地に入って魔法玉の売人を探した。路地の突き当たりにいかがわしい気配が漂う建物があった。入り口に武装した用心棒が二人立っていた。ネロエが呪文を唱えて一人を飛ばし、代わりに予言者を呼び寄せた。予言者が聞けっと叫んでいるあいだにヒュンが残った一人を剣で殺した。予言者の胸にも一突きを加えて、二人は建物に入っていった。
 そこは魔法玉工場だった。ハンマーを握った男たちが小鬼の頭を割っていた。白いマスクをつけた女たちが小鬼のからだを刻んでいた。鍋をかきまわしている女がいた。すり鉢で何かをすり潰している女もいた。奥のほうには白衣の男たちがいた。防塵メガネとマスクで顔を覆って、小さなスプーンで粉と粉とを混ぜていた。
「ああ」とネロエが息をもらした。唇を噛み締め、髪をなびかせて前に進んだ。「邪悪な黒い力よ」ネロエが叫んだ。「おまえたちの思うとおりにはさせません」
 ネロエが呪文を唱え始めた。呪文を唱えながら手を動かすとハンマーを握った男たちが、マスクをつけた女たちが、そして白衣の男たちが、次々に消えて善良な市民に入れ替わった。タバコを口にくわえたスーツの男が、おしゃぶりを口にくわえた赤ん坊が、シャワーキャップをつけた裸の女が、ただうろたえたまま、恐怖を感じて悲鳴を上げた。ヒュンは在庫棚に近寄って、山ほどの魔法玉を手に入れた。

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2015年12月30日水曜日

トポス(62) ネロエは邪悪な黒い力に挑戦する。

(62)
「邪悪な黒い力よ」ネロエが叫んだ。「おまえたちの思うとおりにはさせません」
 ネロエが呪文を唱え始めた。呪文を唱えながら手を動かすと用心棒の一人が消滅した。消えた男がいた場所にはパジャマ姿の男が歯ブラシを握って立っていた。銃弾がパジャマ姿の男を蜂の巣にした。ネロエがもう一度手を動かすと別の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所には夜会服を着た男がグラスを手にして立っていた。銃弾が夜会服の男を蜂の巣にした。ネロエがまた手を動かすとまた一人の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所にはエプロン姿の女がレタスを持って立っていた。銃弾がエプロン姿の女を蜂の巣にした。ネロエが手を動かすたびに用心棒が消えていった。入れ替わりに善良な市民が現われて、ただうろたえたまま、逃げる間もなく蜂の巣にされた。しかしネロエが手を動かして居場所の交換を続けると飛び交う弾の数が減っていった。用心棒が一人また一人と消えていって、善良な市民に入れ替わった。銃声がやみ、わずかに残った用心棒は路地裏の闇に姿を隠し、着の身着のままで見知らぬ場所に投げ出された人々は足もとに転がる無数の死体に気がついて、ただうろたえたまま、喉が破れるまで悲鳴を上げた。ヒュンがネロエの横に立った。
「ここは清浄になりました」とネロエが言った。

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2015年12月29日火曜日

トポス(61) ヒュン、ネロエとともに冒険の旅に出る。

(61)
 ヒュンとネロエは町に出て、そこで魔法玉の売人を探した。二人はいかがわしい気配が漂う通りに入っていった。看板がネオンのぎらつく光をまとって立ち並び、路上にうごめくひとの波を不気味な色に染め上げていた。客引きが声を張り上げ、薄物をまとった男女が観光客に媚を売り、誘惑に負けた男や女を次々と暗い場所に引き込んでいた。嬌声が上がり、怒声が放たれ、銃声がほとばしって硝煙の臭いをまき散らした。そこら中に銃を持った男がいた。どれもが密売組織の用心棒で、二つ以上の手榴弾を胸にぶら下げ、三つ以上の弾倉を腰につけ、自動火器を構えて野戦用の防弾ベストを身につけていた。用心棒たちは怪しい者に目をつけると路地裏に引きずり込んで身ぐるみを剥いだ。怪しい一団に目をつけると一人を誘拐して身代金を要求した。支払いを渋ると指を切り、それでも渋ると耳を削いだ。みかじめを払わない店には手榴弾を投げ込んで、抵抗する者は蜂の巣にした。ふと気がつくと路傍に死体が転がっていた。ふと気がつくと縄張り争いが始まっていた。銃弾が飛び交い、通行人が逃げ惑い、遠慮も会釈もなく爆発が起こり、巻き添えになった男や女が死体になって転がった。
「ああ」とネロエが息をもらした。強い悲しみを感じて唇を噛み締め、髪をなびかせて前に進んだ。

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2015年12月28日月曜日

トポス(60) ヒュン、ネロエと再会する。

(60)
 ヒュンはクロエの家にいた。
「あなたを求めてここに来ました」ネロエが言った。「でもあなたはいなかった。不格好なロボットがいて、ここで自分の妻を探していたのです。わたしはあなたとロボットの居場所を交換しました」
 ヒュンとネロエはクロエの家で暮らし始めた。ネロエはヒュンのために食事を作り、ヒュンのために床を整え、ヒュンの服の洗濯をした。ヒュンはどこからか羽根飾りがついた帽子を見つけてきて、それをかぶって剣を腰に吊るして町へ出かけた。町の広場をぶらついて、若いのになぜぶらついているのかとたずねられると剣を抜いた。若いのになぜ働かないのかとたずねられると剣を抜いた。なぜすぐに剣を抜くのかとたずねられると、剣を抜いて相手の顔に斬りつけた。友達を作り、友達のおごりで酒を飲んだ。したたかに酔って家に帰るとネロエが突っ伏して悲しんでいた。
「邪悪な黒い力が勢いを増しています」とネロエが言った。「わたしたちは、邪悪な黒い力と戦わなければなりません」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
 ヒュンとネロエは旅に出ることにした。旅に出て、旅の先で邪悪な黒い力を滅ぼすことにした。二人の前に道が開けた。
「だがその前に」とヒュンが言った。「魔法玉を少し手に入れておこう」

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2015年12月27日日曜日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

スター・ウォーズ/フォースの覚醒
Star Wars: The Force Awakens
監督:J・J・エイブラムス
2015年 アメリカ 136分

察するところハン・ソロとレイア・オーガナはかなり前に肉体的な関係を持って、その結果としてベンという名の息子が生まれ(ベン・ソロ?)、おそらく母親からフォースの資質を受け継いだベンは事実上の誘拐組織ジェダイ騎士団の再興をたくらむルーク・スカイウォーカーに預けられるが、どうやら何か恐ろしいことがあって、ありがちなことではあるが、ベンはフォースの暗黒面に落ち、責任を感じたルーク・スカイウォーカーは宇宙のどこかに身を隠し、それから幾星霜、レジスタンスはルーク・スカイウォーカーの居場所を明かす星図を手に入れるが、そこへカイロ・レンが率いる帝国軍が現われてレジスタンスのパイロット、ポー・ダメロンは捕虜となり、星図を隠し持ったドロイドBB-8は砂漠に逃れて廃品回収を生業とするレイに拾われ、ポー・ダメロンはストームトルゥーパーからの脱走を決めたフィンに救われて脱出、ポー・ダメロンとはぐれたフィンはレイと出会い、そこへBB-8を探す帝国軍が現われるのでレイとフィンはBB-8とともに放置状態のミレニアム・ファルコンで脱出、ミレニアム・ファルコンを探すハン・ソロ、チューバッカと出会い、レジスタンスにBB-8を渡すためにハン・ソロの伝手を頼っていくと、そこにも帝国軍が現われてレイが捕まり、レイはカイロ・レンと対決してフォースを覚醒させ、帝国軍の宇宙要塞が例によって接近しつつあることを知ったレジスタンスが反撃に出る。
J・J・エイブラムスはおおむねにおいてよい仕事をしたと思う。プロットがエピソードIVの焼き直しだとしても、とにかく絵はしっかりと作られているし、タイ・ファイターの意外なまで接近した描写はなかなかに楽しいし、ヒロイン役のデイジー・リドリーがなかなかにいい感じで、全体としての印象は格別悪くない。ただ、家族合わせが相変わらずで、そこがうざいし、この洒落っ気のなさはほんとになんとかならないのか。あと、秘密基地を作ってはそこからXウィングを飛ばすしか能のないレジスタンスも困ったものだが、帝国軍がそのレジスタンスに移動要塞をぶつけるのは三度目であろう、弱点を狙って防衛戦に出てくるのはわかりきった話なので、だから早期警戒網をちょっと整備しておこうとか、そういうことは考えないのか。どちらもフォースに頼る前にすべきことがかなりあるのではないかと、そう愚考するような次第である。

2015年12月26日土曜日

トポス(59) ピュンは失った歯を見つけ出す。

(59)
 怒りに染まった民衆が門を破って城になだれ込んだころ、ピュンは失った歯を探して泉のほとりに立っていた。途方に暮れていると水を破って泉の精が現われた。ピュンに金の歯を差し出して、おまえがなくしたのはこの金の歯かとたずねたので、ピュンは違うと言って首を振った。すると泉の精はピュンに銀の歯を差し出して、おまえがなくしたのはこの銀の歯かとたずねたので、ピュンは違うと言って首を振った。最後に泉の精はピュンにピュンの歯を差し出して、おまえがなくしたのはこの歯垢まみれの歯かとたずねたので、ピュンはそうだと言ってうなずいた。なんと正直なことか、と泉の精はピュンに言った。ではこの歯垢まみれの歯を取るがよい、この金の歯も銀の歯も取るがよい。筋骨たくましい二人の歯医者がピュンの腕をがっしりとつかんだ。古びた歯医者の椅子に縛りつけて口をこじ開け、古びた歯医者の道具を使って金の歯や銀の歯や歯垢まみれの歯を力まかせに植えつけていった。ピュンの口から悲鳴がもれた。ピュンの両目が恐怖にわななき、ピュンの口から血が流れた。意識が薄れて、目がすぐに闇に覆われた。気がつくと泉のほとりに転がっていた。血まみれの口を水でゆすぎ、口の中を水に映して悲鳴を上げた。歯垢まみれの歯のうしろには、輝く金の歯が並んでいた。輝く金の歯のうしろには、輝く銀の歯が並んでいた。金の歯も銀の歯も、どれもがサメの歯のようにとがっていた。そして怒りに染まった民衆は城の階段を駆け上がってヒュンの前に殺到した。キュンが羊飼いの杖をかまえ、クロエがショットガンを腰でかまえた。ヒュンの姿が消滅した。ヒュンが立っていた場所には不格好なロボットがいた。
 くくくくく、とロボットが笑った。

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2015年12月25日金曜日

トポス(58) ヒュン、国王になる。

(58)
 ヒュンは王を追い出して王になった。光り輝く王冠をかぶり、王宮のテラスに立って演説した。
「俺は運命を受け入れている。俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
 人々は新しい王に歓声を送った。詩人は王の勇気を讃え、新聞は新時代の到来を告げた。若者たちは王を真似て羽飾りがついた帽子をかぶり、腰に剣を吊るして町の広場に繰り出した。学校に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。職場に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。王もまた、羽飾りがついた帽子をかぶって町の広場に現われた。なぜ王が、と問う者に剣を抜いて斬りかかり、友達を作って友達のおごりで酒を飲んだ。酔っ払って城に戻るとクロエが怒り狂っていた。
「飲んだくれ」クロエが叫んだ。
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「ろくでなし」クロエが叫んだ。
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。
 間もなく災厄が王国を襲った。
 洪水で町が流され、地震で町が破壊され、季節はずれの暴風で穀倉地帯が壊滅した。ヒュンはすぐにすべての被災地を視察した。
 洪水の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
 地震の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
 暴風の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
 人々の苦難を見てヒュンは言った。
「すげえ」
 すげえ、と言うだけでまったく手を打とうとしないので、人々は王の正統性に疑問を抱いた。新聞は王を糾弾し、革命家たちは檄文をばらまき、人々は城の前で怒りの拳を振り上げた。王の首を求めて城の門に殺到した。
「いったい何が始まった?」
 ヒュンがたずねると従僕が答えた。
「陛下、革命でございます」

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2015年12月24日木曜日

トポス(57) ヒュン、ドラゴンを倒す。

(57)
 ヒュンはドラゴンを倒して首を取った。ドラゴンの首を担いで進んで行くと、城壁に囲まれた大きな町にたどり着いた。町の人々はドラゴンに苦しめられていた。ドラゴンは町を襲って家々を焼き、財宝を奪い、女や子供をさらって身代金を要求した。口から火を吹きながら銀行に現われて強引に融資を申し込み、金を受け取ると踏み倒した。下町の酒場に入り浸って無頼漢どもに酒をおごり、手なずけて犯罪をそそのかし、かと思うと大学に姿を現わして、学生の前で扇動的な演説をぶって危険思想をばらまいた。陰謀があると聞けば夜空を飛んで会合に加わり、革命家たちの秘密会議にもほとんど欠かさずに顔を出し、地下新聞に扇情的な記事を書いて青少年を堕落させた。町の人々は国王に直訴し、国王はドラゴンを倒すために軍隊を送った。一人の兵士も戻らなかった。そこで国王は約束した。ドラゴンを倒した勇者には王国の半分と王女を与えると約束した。多くの勇者がドラゴンを倒すために旅立っていった。戻ってきた者は一人もなかった。そこへヒュンがやって来た。ドラゴンを倒し、ドラゴンの首を担いでやって来た。町の人々はヒュンを歓迎した。国王は約束を果たすためにヒュンを招いた。美しい王女が微笑みながら、ヒュンに向かって手を差し出した。クロエがショットガンの引き金を引いた。美しい王女が血まみれになって吹っ飛んだ。衛兵が駆け寄るのを見てヒュンはすぐさま剣を抜き、キュンは杖で床を叩いた。

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2015年12月23日水曜日

トポス(56) ピュンは歯を失う。

(56)
 ピュンは痛むからだに鞭を打って野を駆けた。ヒュンを抜いて四つ辻に着くと藪に隠れて息を殺した。ヒュンが来た。ピュンが立ち上がって前に進んだ。ヒュンをにらんで黄金色の魔法玉を取り出した。
 ピュンが魔法玉を投げ上げた。魔法玉が一直線に空に向かって駆け上がった。すぐにかすんで見えなくなった。しばらくしてから天空の一点に黒い雲が現われた。渦を巻きながら広がって、真昼の空を覆っていった。雲の中心に新たな小さな渦が浮かんだ。回転しながらまわりの雲を押しのけると、虚空につながる窓が開いた。夜の空よりもなお暗い漆黒の世界を巨大な影が横切った。何度となく円を描くと最後に大きな弧を描いて輪になった雲をくぐり抜けた。雷をしたがえて影が飛んだ。黒い翼を広げて風に乗り、尾を伸ばして風を切り、長い首をめぐらして雲の影になじむ地上を見下ろした。黄金色の目が光を放った。口から黄金色の光が放たれた。光は燃える玉となって空を駆けて彼方に見える山の頂に激突した。山がはじけた。爆音とともに炎と土砂が噴き上がった。黒い翼が空を叩いた。黄金色の目が前をにらんだ。山の形が変わっていた。それが大きく羽ばたいた。形を変えた山の上に降り立って、四つの足で焦げた地面を踏みしめた。翼を畳み、また大きく広げると、雲が渦巻く空に向かって雄叫びを放った。
 こけ脅しのテキストが垂れ流されているあいだにヒュンが煉瓦を取り出していた。赤い煉瓦を振り上げて、ピュンの頬に叩きつけた。ピュンの口から歯が束になって飛び出した。意識が薄れて、目がすぐに闇に覆われた。

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2015年12月22日火曜日

トポス(55) ピュンは森に罠を仕掛ける。

(55)
 街道が森をくぐる場所にピュンは新たな罠を仕掛けた。足首の高さに縄を張って、縄に足がかかると吊り上げておいた丸太が振り子のように落ちる仕組みになっていた。丸太にはもちろん棘を植えた。ヒュンが近づいてきた。ピュンは罠を確かめた。吊り上げた丸太を見上げてうなずき、それからしゃがんで道の上の縄に軽く触れた。仕掛けは見事に働いた。棘を生やした丸太が凄まじい速さで降ってきて、一瞬でピュンを串刺しにした。垂れ下がった丸太に打ちつけられて息も絶え絶えになっていると、そこへヒュンがやって来た。横目に見たので顔をそむけた。
 ピュンは痛むからだに鞭を打って森を駆けた。森を抜けると街道が川と交わる場所があって、そこに木造の橋がかかっていた。ピュンは橋に爆薬を仕掛けた。導火線を引っ張って、物陰に隠れてヒュンを待った。ヒュンが来た。ピュンは導火線に火をつけた。華々しく火花を散らして炎が走り、二メートルほど進んで消えた。ピュンは隠れ場所から飛び出して、もう一度導火線に火をつけた。少し進んでまた消えた。ヒュンが橋を渡り始めた。ピュンは導火線に火をつけた。消えるたびに火をつけた。気がついたときには橋に近づき過ぎていた。目の前に導火線を垂らした爆薬があった。炎が導火線を駆け上がり、壮絶な爆発が起こって橋とピュンを吹っ飛ばした。

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2015年12月21日月曜日

トポス(54) ピュンは復讐を求めている。

(54)
 ピュンの目的は一つだった。ピュンは復讐を求めていた。裏切り者のヒュンにこの世の地獄を味合わせなければならなかった。親兄弟を皆殺しにして、親戚もはとこの果てまで残らず殺して、爪を一枚ずつ引っこ抜き、指を一本ずつねじ切ってから鼻と耳をそぎ落とし、皮を剥ぎ、肉をえぐり、腕と脚を切り落とし、性器をむしり取って口に突っ込み、最後に目玉をえぐってやろうと考えていた。
 復讐を果たすためには、まずヒュンを捕えなければならなかった。ピュンは距離を置いてヒュンを追った。ヒュンが進んだあとには死体が点々と転がっていた。ときには距離を縮めて、間近から観察した。殺戮の現場も目撃した。あの剣はやばい、とピュンは思った。あの女は怖い、とピュンは思った。あの羊飼いもやっかいだ、とピュンは思った。捕えようとすればこちらが捕えられるか殺される。ピュンは方針を変更した。一気に片づけることにした。夜のあいだに先へ進んでヒュンの行く手に穴を掘った。穴の底に槍を立てて、草をかぶせて穴を隠した。物陰に隠れてヒュンを待った。固唾を呑んで待ちかまえた。ヒュンが来た。何も知らずに近づいてきて、落とし穴に足を乗せた。そしてそのまま通り過ぎた。ピュンは隠れ場所から出て落とし穴を見下ろした。首をひねって、落とし穴に足を乗せた。そのまま落ちていって串刺しになった。

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2015年12月20日日曜日

トポス(53) 予言者たちが道に並んで、声をそろえて終わりの始まりを叫び出す。

(53)
 邪悪な黒い力が南で勢いを増していた。黒い力に加担する多くの者が、チュンの失敗を見て学び、ミュンの失敗を見て学び、ギュンの失敗を見て学んだ。そして前よりも強く、賢くなった。結束を固めるために教義を生み出して構成員の心に勇気を吹き込み、残酷な掟を定めて裏切り者を警戒した。二流どころの顔ぶれでは政府の特殊部隊に対処できないことがわかったので、政府や軍の特殊部隊から兵士を募って自前の軍隊を強くした。最新鋭の武器をそろえ、最新鋭の魔法玉もそろえ、強力になった軍隊を各地に派遣して強引にビジネスを推し進めた。粗悪な魔法玉を売りさばき、職にあぶれた若者を軍隊に取り込み、企業や商店を脅してみかじめを取り、生活物資の流通を仕切り、金融に乗り出し、メディアを支配し、ときには学校を作り、病院を作り、恵まれない人々に愛の手を差し出し、警察や軍隊が出動すると圧倒的な攻撃力で撃退した。一つの地域を制圧すると隣の地域に触手を伸ばして、そこも制圧するとまた隣へと邪悪な黒い力のフランチャイズを展開して、競合する勢力に遭遇すると縄張りを争って戦争を始めた。
 邪悪な黒い力が迫っている、と予言者は言った。千年にわたる平和と繁栄は突き崩され、偉大なる王国は滅びの道を歩み始める、と予言者は言った。苦難の時代がやって来る、と予言者は言った。災いが大地を覆い尽くす、と予言者は言った。邪悪な黒い力がおまえたちの土地を奪い、邪悪な黒い力がおまえたちの土地を耕すであろう、と予言者は言った。予言者たちが道に並んで、声をそろえて終わりの始まりを叫んでいた。
「世界が終わる」
「終末に備えよ」
「この声を聞け」

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2015年12月19日土曜日

マクリントック

マクリントック
Mclintock!
1963年 アメリカ 127分
監督:アンドリュー・V・マクラグレン

大地主で大牧場主で近隣の水利権を押さえ、鉱山と製材所を持つ大金持ちで、町にもその名がついている男マクリントックの妻キャサリンが二年ぶりに町に現われ、亭主に向かって喧嘩を売る。そのあいだにマクリントックの周囲では次から次へと事件が起こり、農民は政府の甘言に釣られて痩せた土地に入植し、その入植者たちは地元のコマンチとトラブルを起こし、それをいさめにいった町の男たちと入植者のあいだでもトラブルが起こり、マクリントックの娘には気に入らない大学出の小僧がへばりつき、政府任命の知事はマクリントックの女房にしきりと粉をかけ、その女房はマクリントックが料理女とできていると疑っている。
マクリントックがジョン・ウェイン、キャサリンがモーリン・オハラ。良心的に作られたコメディ仕立ての明るい西部劇で、ジョン・ウェインは全編をとおして空砲を一発撃つだけで、誰も死なない。演出のテンポは速く、ちょっと間の抜けた会話は気が利いており、ロデオ大会などの見どころもある。登場人物には主役から脇役まできっちりとわかりやすいキャラクターが割り振られ、よどみもなにもないので最後まで安心して見ていられる。とはいえ、ここで約束となっている古典的なモラルでは個人はおおむねにおいて常に正しく、そして政府の役人は無能者ばかりということになっていて、このほとんど反国家的な自主独立の精神は最近のアメリカ映画にはまず見受けられない種類のものであろう。同様に、言うことを聞かない女房は尻を叩いて折檻するという古めかしいコードもまた最近のアメリカ映画では絶対に見受けられない種類のものではあるまいか。


Tetsuya Sato

2015年12月18日金曜日

リディキュラス6

リディキュラス6
The Ridiculous 6
2015年 アメリカ 118分
監督:フランク・コラチ

子供のころに孤児になってアパッチに育てられたトミーのところへフランク・ストックバーンという名の老人が現われて父親だと名乗り、余命がわずかなので悪事をして貯めた5万ドルを譲りたいと申し出るが、そこへフランク・ストックバーンの一味だというシセロという男が徒党を率いて現われて金をよこせと脅してフランク・ストックバーンをさらうので、トミーは父親を救うために金を用意することにして町を訪れ、そこで泊まった宿のスペイン系老女にフランク・ストックバーンのことをたずねると、かつて交接した経験があると詳細を語り、その結果として息子を得たと言うので、その息子に会って自分たちは兄弟であると告げると意気投合して父親を救うために銀行を襲おうということになり、傲岸な銀行家がいる銀行を襲っているとその様子を見たいかにもアホウな農夫が何かと感心して、自分の父親もまた銀行強盗でその名はフランク・ストックバーンであったと告白して兄弟は三人になり、三人で逃走して金を稼ぎながらフランク・ストックバーンの行方を追っていると、さらに三人の兄弟が加わり、稼いだ金をそろいのアイパッチをした悪党団に奪われると、カスター将軍、マーク・トゥエイン、ワイアット・アープなどがそろってポーカーをしているところに乗り込んで大金を奪い、ついにシセロの一味に追いついて父親を救い、真相が明かされる。 
アパッチの神秘の技を身につけたトミーがアダム・サンドラーで、怪人ぶりはなんとなく『エージェント・ゾーハン』を思い出させるが、どちらもアダム・サンドラーの企画なのでそういうことになるのかもしれない。フランク・ストックバーンがニック・ノルティ、シセロがダニー・トレホ、かつての仲間だったのがハーヴェイ・カイテル、床屋兼医者がスティーブ・ブシェミ、荒野の真ん中にいきなり現われて中国人チームと野球での対戦を要求する奇人がジョン・タトゥーロ。俳優陣に不足はないし、笑えるところもそれなりにあるものの、しまりのない仕上がりで、同じようにしまりがないのであれば素材に対する距離を明確にしたセス・マクファーレンのほうがまだ面白かったということになると思う。不思議なことだが、西部劇でコメディをやると失敗が多い。なんだか無性に『マクリントック』が見たくなった。 

Tetsuya Sato

2015年12月17日木曜日

ロシアン・スナイパー

ロシアン・スナイパー
Bitva za Sevastopol
2015年 ウクライナ/ロシア 123分
監督:セルゲイ・モクリツキー

キエフの大学で史学を学ぶリュドミラ・パブリチェンコはたまたま訪れた射撃場で射撃の才能を示したことから休学して射撃訓練を受けることになり、復学してオデッサで過ごしていると戦争が勃発、まわりがどう反対しても内務人員委員部少佐の父が許さない、ということで志願して訓練部隊で訓練を受け、そこでも才能を認められてオデッサの防衛戦に投入され、初陣で戦車のペリスコープを撃ち抜いて操縦手を殺害、以降、着実に戦果を上げるが負傷して病院へ送られ、療養中にオデッサが陥落、パブリチェンコは撤退する軍とともにセヴァストポリに移り、そこで前線に復帰してドイツ軍狙撃兵を含む敵多数を殺害、合計309人を殺害したところで重傷を負い、後送を認められてセヴァストポリを脱出したあとはアメリカに送られてワシントンD.C.の国際学生大会などで演説、エレオノラ・ルーズベルトと出会う。 
1970年代の末からいわゆる大祖国戦争における女性兵士の実態に関する言及が始まり、この素材を扱う形で『対独爆撃部隊ナイトウィッチ』などの映画が作られてきたが、映画における素材としてはたぶん本作で完成したのではないだろうか。戦争という状況を背景に国家にとって都合よく女性であったりなかったりする存在が本質において必要以上に女性であり、それが人間の本性に反する、という以上に自覚として女性の本性に反する行為に言わば耽溺させられて、気がついたらもう泣くほど嫌気が差している、という当たり前の描写が恐ろしいほど新鮮だった。女性の機能を押し殺している主人公と、女性の機能を絵に書いたように演じている親友マーシャとの対比が面白く、主人公が経験した辛酸を見抜いて深い同情を向けるエレオノラ・ルーズベルトの存在がたいそう温かい。映画は41年から42年までの状況が中心にしながら、エレオノラ・ルーズベルトをおもな語り手として1937年から1957年までのタイムスパンを扱い、簡潔なカットを積み重ねて主人公の心象を描き出していく。演出は抑制されているが、厚みがあり、的確で心地よい。傑作だと思う。もちろん戦争映画としても本気の作り込みがされていて、狙撃戦が中心なので規模自体は小さいものの、オデッサからセヴァストポリまで空間は十分に演出されている。オデッサ撤退ではポリカルポフI-16とメッサーシュミットの空中戦という珍しいシーンも登場する。 


Tetsuya Sato

2015年12月16日水曜日

トポス(52) ピュンは不満を感じている。

(52)
 ピュンはギュンの傭兵部隊を預かっていた。ギュンの合図でミュンの予言者を駆逐して、ミュンを殺害する手筈になっていた。ミュンの排除に成功したら、ミュンに代わってギュンがすべてを牛耳ることになっていた。それはそれでかまわないと思ったが、かまわないと思ったときにはギュンに不満を感じていた。ギュンは待っているだけで、実行するのはピュンだった。ギュンは文句を言うだけで、現場で苦労するのはピュンだった。それなのに、なぜギュンが全部を持っていくのか。ピュンの不満に気がついたのはギュンではなかった。ミュンでもなかった。ピュンの不満に気がついたのは政府の潜入捜査官だった。予言者の一員となってミュンの組織の内偵を進めていた捜査官は間もなくピュンの存在に気がついて、訓練された鼻でヒュンの不満を嗅ぎ取った。ピュンを監視して、甘い言葉と報酬で釣ってインフォーマントに仕立て上げた。ギュンの作戦は筒抜けだった。ギュンの傭兵部隊がミュンの護衛に襲いかかると、そこへ政府の特殊部隊がなだれ込んでギュンの部隊に襲いかかった。二流に届かない顔ぶれのギュンの部隊はたちまちのうち駆逐され、ミュンの護衛は降伏した。ミュンはその場で逮捕された。ギュンも間もなく逮捕された。ミュンとギュンの裁判が始まり、すぐに判決が出て二人は刑務所に送られた。ミュンは回想録を書き始めた。予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年12月15日火曜日

トポス(51) ギュンは行動を開始する。

(51)
「ヒュンはわたしが作り出した怪物だ」とギュンはいつも話していた。「わたしがいなければヒュンはコソ泥で終わっていた」とギュンはいつも話していた。「ヒュンの殺戮能力は誰よりもわたしが一番よく知っている。ヒュンにミュンの予言者部隊をぶつければ、何が起こるのかもわかっていた」とギュンはいつも話していた。「ヒュンの脅威をミュンに訴え、ミュンを動かすのにそれほど手間はかからなかった」とギュンはいつも話していた。「わたしが予想したとおりだった」とギュンはいつも話していた。「ミュンの精鋭部隊はヒュンの反撃にあって全滅した」とギュンはいつも話していた。「同時にミュンの周囲に大きな間隙が出現した。手勢は残っていたが、それはどう見ても烏合の衆に過ぎなかった」とギュンはいつも話していた。「この瞬間のために、わたしは傭兵部隊を用意していた。一流でまとめる予算はなかったが、実際のところ二流に届かない顔ぶれでしかなかったが、それでも戦闘部隊であることに違いはない。つまり訓練された予言者ではなく、訓練された兵士だったということだ」とギュンはいつも話していた。「ミュンの予言者部隊は奇襲戦法を好んだが、自分たちが奇襲を受けるとは、まったく予想していなかった」とギュンはいつも話していた。「間隙が出現したその瞬間、ミュンの野望を打ち砕く絶好の機会が訪れた。ばかげた予言者部隊を排除して、状況を正常化する機会が訪れていた。わたしはピュンに指示を与えた」

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2015年12月14日月曜日

トポス(50) ギュンは不満を感じている。

(50)
 ギュンが究極の魔法玉を完成させたので、ミュンはギュンを信頼した。しかしギュンはミュンに不満を感じていた。
「最初から感じていた」とギュンはいつも話していた。「予言者の力で予言を成就させるという目論見は、それはそれで立派なものだが」とギュンはいつも話していた。「予言者にこだわるあまり、ミュンは現実的な視点を失っていた。どれほど訓練しても、いかに数で圧倒しても、予言者は予言者に過ぎないのだ」とギュンはいつも話していた。「予言を成就させるのは予言者ではない。ミュンは自分のやり方でうまくいっていると信じていたが」とギュンはいつも話していた。「うまくいっているように見えたのは、わたしが作った魔法玉があったからだ」とギュンはいつも話していた。「実際のところ、もしわたしの魔法玉がなかったら」とギュンはいつも話していた。「ミュンは何一つ満足に事を運ぶことができなかった」とギュンはいつも話していた。「にもかかわらず、ミュンはわたしを魔法玉の調合師としてしか認めようとしなかった」とギュンはいつも話していた。「ミュンは現実的な視点を失っていた。現実的な視点を失って、わたしの利益を損なっていた」とギュンはいつも話していた。「だからわたしは自分の利益を守らなければならなかった」とギュンはいつも話していた。

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2015年12月13日日曜日

トポス(49) ヒュン、予言者たちに襲われる。

(49)
 ヘリコプターから投げ降ろされたロープを伝って予言者たちが下りてきた。白髪を乱し、曲がった杖を背中に結わえて、滑るようにロープを伝って宿屋のバルコニーに降り立った。背中の杖をすばやく取って、窓を破って部屋に飛び込み、声をそろえて聞けっと叫んだ。クロエが寝台から転がり出て、ショットガンを構えて引き金を引いた。白い衣を鮮血で染めて数人が倒れた。窓から現われた新手が鈍色の玉をクロエに向かって投げつけた。湯気のようなものが湧いて出て、湯気に包まれたクロエが膝を突いて泣き出した。ヒュンが寝台から転がり出た。壁を叩いてキュンを呼び、剣を抜いて予言者たちに斬りかかった。予言者たちが鈍色の玉をヒュンに向かって投げつけたが、腕に巻きつけた紐が湯気を残らず吸い取った。数人を倒したところでキュンが部屋に飛び込んできた。キュンを振り返ってヒュンが叫んだ。
「下へ行け」
 キュンが階段を駆け下りていった。一階にも山ほどの予言者がいて、並んで杖を構えていた。キュンを見上げて聞けっと叫んだ。キュンが杖で床を突いた。予言者たちは深い悲しみと怒りに包まれて、次々と腰を下ろして膝を抱えた。泣き続けるクロエの手を引いて、キュンが階段を駆け下りてきた。予言者たちをまたいで宿屋から出て、上空を旋回するヘリコプターの視界から逃れた。向かいの建物の屋上からピュンが一部始終を眺めていた。双眼鏡を下ろしてうなずいた。それを合図に傭兵部隊が動き始めた。

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2015年12月12日土曜日

トポス(48) ヒュン、買い物をする。

(48)
 ヒュンは街道を南へ進み、最初に見つけた町で宿を取った。まず質屋を探して、そこでエルフの宝物を金に換えた。次に金物屋を探して、そこで防具を手に入れた。ヒュンの剣はあらゆる魔法攻撃を跳ね返したが、ステータス攻撃を跳ね返すことはできなかった。だから大金を払ってステータス攻撃を無効にするという紐を買って、それを腕に巻きつけた。クロエが物欲しそうな目をヒュンに向けたが、紐を一本買っただけで手持ちの金がなくなった。食事をする金も残らなかった。
「どうするのよ?」とクロエが言った。
「おまえが考えろ」とヒュンが言った。
 クロエがショットガンを肩からはずした。ショットガンを腰で構えて向かいの銀行に乗り込んでいった。キュンが杖を抱えてあとを追った。銃声がして、悲鳴が聞こえた。クロエが札束をつかんで戻ってきた。
「甲斐性なし」
 そう言いながらヒュンに札束を押しつけた。ヒュンはその金を持って町一番の店に乗り込んだ。キュンが杖を抱えてあとを追った。七人の踊り子と踊ったので明け方には文無しになっていた。店から追い出されて宿に戻るとクロエが赤い目をして怒っていた。
「ろくでなし」クロエが叫んだ。「酔っ払いの色ぼけ野郎」
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「俺にはおまえだけだ」
 ヒュンが言うとクロエが叫んだ。
「死んじまえ、屑野郎」
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。

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2015年12月11日金曜日

トポス(47) ギュンは究極の魔法玉を完成する。

(47)
 ギュンの手の上で小さな魔法玉が黄金色の光を放っていた。
「世界に二つとない」ギュンが言った。「これが究極の魔法玉だ」
 ギュンが魔法玉を投げ上げた。魔法玉が一直線に空に向かって駆け上がった。すぐにかすんで見えなくなった。しばらくしてから天空の一点に黒い雲が現われた。渦を巻きながら広がって、真昼の空を覆っていった。雲の中心に新たな小さな渦が浮かんだ。回転しながらまわりの雲を押しのけると、虚空につながる窓が開いた。夜の空よりもなお暗い漆黒の世界を巨大な影が横切った。何度となく円を描くと最後に大きな弧を描いて輪になった雲をくぐり抜けた。雷をしたがえて影が飛んだ。黒い翼を広げて風に乗り、尾を伸ばして風を切り、長い首をめぐらして雲の影になじむ地上を見下ろした。黄金色の目が光を放った。口から黄金色の光が放たれた。光は燃える玉となって空を駆けて彼方に見える山の頂に激突した。山がはじけた。爆音とともに炎と土砂が噴き上がった。黒い翼が空を叩いた。黄金色の目が前をにらんだ。山の形が変わっていた。それが大きく羽ばたいた。形を変えた山の上に降り立って、四つの足で焦げた地面を踏みしめた。翼を畳み、また大きく広げると、雲が渦巻く空に向かって雄叫びを放った。
「少しばかり改良すれば」とギュンが言った。「こけ脅しの描写はカットできる」
 予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年12月10日木曜日

トポス(46) ヒュン、冒険の仲間とともに森で怪物退治をする。

(46)
 クロエがエルフの館に火を放った。ヒュンは生き残ったエルフを片づけながら森を進んだ。川を渡ろうとしたところで怪物に出会った。角が三本あって、牙も三本生えていた。五本の脚で地面を蹴って飛び出してきて、ヒュンの前で七本の尻尾を振り立てた。子ウサギほどの大きさだった。ヒュンは足を上げてその怪物を踏みつぶした。あたりをうろうろしていると同じ怪物が次から次へと現われたのでヒュンは片端から踏みつぶした。クロエも目を血走らせて踏みつぶした。キュンも一緒になって踏みつぶした。川を渡った先で別の怪物に遭遇した。目が八つあって一直線に並んだ五つの鼻の穴から煙を吹き出し、二十八もの脚を動かして滑るように近づいてきた。子ブタほどの大きさだった。ヒュンは足を上げてその怪物を踏みつぶした。あたりをうろうろしていると同じ怪物が次から次へと現われたのでヒュンは片端から踏みつぶした。クロエも目を血走らせて踏みつぶした。キュンも一緒になって踏みつぶした。森の中をしばらく進むとまたしても怪物に遭遇した。仔細は省くがイノシシほどの大きさだった。踏みつぶすのは無理だったのでヒュンは剣を抜いて斬り殺した。あたりをうろうろしていると同じ怪物が次から次へと現れたのでヒュンは片端から斬り殺した。クロエはショットガンで撃ち殺し、キュンは杖で打ち殺した。街道が見えたころには三人とも、自分が少し強くなったと感じていた。

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2015年12月9日水曜日

トポス(45) 邪悪な黒い力が勢いを増している、とエルフの長老が言う。

(45)
「邪悪な黒い力が南で勢いを増している」とエルフの長老が言った。「かつておまえがしたように、やつらはエルフを狩って魔法玉に変えている。よいか? おまえが罪を贖うことを望むなら、死を覚悟して南へ進め。さもなければ、いまここで死を覚悟するがよい」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
 長老はヒュンに剣を預けた。名もない剣だったが、あらゆる魔法攻撃を跳ね返す力を備えていた。クロエのショットガンはエルフの鍛冶屋によって改造された。弾の数が無限になり、念じるだけで弾道が変わった。キュンの杖も改造された。杖の先で地面を打つと半径三メートル以内の敵にランダムでステータス異常を引き起こした。
「これで準備は整った」と長老が言った。「ここですべきことは残されていない。いったい何を待っているのだ? 行って我らの敵を滅ぼすがよい」
 クロエがショットガンの引き金を引いた。エルフの長老が吹っ飛んだ。エルフの女たちがいっせいに呪文を唱えてヒュンに炎や水を浴びせかけた。ヒュンが剣を抜いて宙を払うと、跳ね返された魔法が女たちを蒸し焼きにした。エルフの戦士たちが剣や弓を手にして駆け込んできた。キュンがすかさず躍り出て、杖の先で床を突いた。戦士たちは悲しみに浸り、立ったまま深い眠りに落ち、かと思うと怒りに飲まれて隣の仲間に襲いかかった。クロエがそこへ散弾を浴びせた。またしても死体の山ができあがったが、クロエの心は晴れなかった。

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2015年12月8日火曜日

トポス(44) ヒュン、エルフの長老と会う。

(44)
 ヒュンは森を奥へ奥へと進んでいった。エルフは弓に矢をつがえていたのに、ヒュンを打とうとしなかった。殺すことができたはずなのに、ヒュンを殺そうとしなかった。武器を捨てろと言ったのは、捕えるように命令されていたからだ。どうやら誰かが俺に会いたがっているようだ、とヒュンは思った。それにしても誰かとはいったい誰なのか。残った一人を締め上げていれば、それを聞き出すことができたはずだった。名前と居場所を聞き出すことができたはずだった。それなのに、残らず殺してしまったのだ。一人は残しておくべきだったのに、一人残らず殺してしまったのだ。ヒュンは強い怒りをまたしても感じた。怒りのままに拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。クロエの頬にも叩きつけた。
「なんだってんだ」キュンが叫んだ。
「このろくでなし」クロエが叫んだ。
「くそったれめが」ヒュンが叫んだ。
 水の音が聞こえてきた。木々のあいだをくぐり抜けると滝が見えた。滝にかぶさるようにして、大きな館がガラスの塔を連ねていた。触ると壊れそうなガラスの螺旋階段がガラスの塔をめぐっていた。
 ヒュンは館の門を叩いた。門に耳を押しつけるとエルフの言葉がかすかに聞こえた。門が開いてエルフが現われ、敵意に満ちた目つきでヒュンを見た。ヒュンは館の奥に案内された。そこにはエルフの長老がいた。
「おまえを探していた」と長老が言った。

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2015年12月7日月曜日

トポス(43) ヒュン、森でエルフと出会う。

(43)
 ヒュンは山を下って森に入った。木々が葉を重ねて陽射しをさえぎる暗い森に入っていった。
「尾けられている」とヒュンが言った。
 クロエがショットガンを腰で構えた。
 キュンが羊飼いの杖を両手に握った。
 黒々と影をまとう木々をまわって、一団のエルフが弓を構えて現われた。矢を引き絞ってヒュンを狙った。
「武器を捨てろ」
 エルフの一人が叫ぶのと同時にクロエがショットガンの引き金を引いた。叫んだエルフの顔が吹っ飛んだ。数本の矢がヒュンの足もとに打ち込まれた。クロエがまたショットガンの引き金を引いた。キュンが杖で打ちかかり、ヒュンが剣で斬りかかった。エルフが最後の一人になったとき、ヒュンが腕を上げてクロエをとめた。いきなり流れを断ち切られたので、クロエの心は晴れなかった。そのあいだにキュンが杖を振り上げた。エルフが放った矢をかわして、エルフの頭を粉砕した。ヒュンは強い怒りを感じた。怒りのままに拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。キュンが叫んだ。
「なんだってんだ」
「一人は残しとけ」
 ヒュンはそう言ってエルフの死体を探り始めた。財布や魔法玉を見つけるとそれを自分の懐にしまった。
「独り占めかよ?」
 キュンがそう言うとヒュンは再び拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。キュンが叫んだ。
「なんだってんだ」
 キュンはもう一度拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。
「俺がボスなんだ」

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2015年12月6日日曜日

スペクター

スペクター
Spectre
2015年 イギリス/アメリカ 148分
監督:サム・メンデス

前任のMの遺言にしたがって暗殺者ルチア・スキアラを追っていたジェームズ・ボンドは死者の祭りでにぎわうメキシコシティで大立ち回りをやらかし、ロンドンに戻ったジェームズ・ボンドはMから無期限定職を言い渡され、政府官僚マックス・デンビは00セクションの解体を匂わせ、そうするあいだにもMi6は本部ビルを失ってMi5に吸収され、さらに英国の諜報機関自体が9か国からなるいかがわしい国際機関に改組されて、民間資本で作られたその本部ビルは早くも廃墟と化したMi6本部ビルの真向かいで醜悪な現代建築ぶりをさらし、一方、単独行で敵を追うジェームズ・ボンドは手がかりを求めてイタリアに飛び、そこで謀略組織スペクターの存在を知り、スペクターを仕切るオーベルハウザーの手がかりを求めてオーストリアに飛び、手がかりを得てマドレーヌ・スワンとともにタンジールへ飛び、そこでさらに手がかりを見つけて砂漠の奥へ入り込み、スペクターの秘密基地を発見して正面から入っていくと、オーベルハウザーが現われて母方の姓ブロフェルドを名乗る。 
ブロフェルドがクリストフ・ヴァルツ、スキアラの妻がモニカ・ベルッチ、軽量級官僚マックス・デンビがBBC版『シャーロック』でモリアティをやっていたアンドリュー・スコット。序盤のメキシコシティでの航空アクションからローマでの官能的なカーチェイス、アルプスでの飛行機対4WDの追撃戦、砂漠を進む列車内での格闘と派手なシーンに不足はないが、きわめて美しいカメラワークはそのことごとくに閉塞感と距離感をまぶし、カメラはほぼ終始一貫してうつむき加減で、たまに見上げても廃墟のようなものが空を覆い隠している。このデザインは『ロード・トゥ・パーディション』を思い出させる。どこか薄暗くて重たくて、動機に怨恨が混じっているという点では『スカイフォール』に似ているが、密度は高く、スタイルも凝縮されている。薄暗い割には人物が軽量化されている分、なめらかな仕上がりになったのかもしれない。あえて文句を言えばここに登場するスペクターの正体、偽薬の販売をやってWHOに目をつけられ、ヒューマントラフィックにも深くかかわり、あげくに各国諜報機関の情報収集をアウトソーシングで請け負っている。卓越した情報収集能力で入札時の予定価格を手に入れて、競合他社を蹴落としたのであろうか、などとつい考えてしまうほど夢がない。ともあれ、造形的にはきわめて美しい作品であることに間違いはない。 
Tetsuya Sato

2015年12月5日土曜日

リベリオン ワルシャワ大攻防戦

リベリオン ワルシャワ大攻防戦
Warsaw 44
2014年 ポーランド 128分
監督:ヤン・コマサ

1944年8月、ワルシャワで母と小さな弟と暮らすステファンは近所の娘アラの誘いでレジスタンスに加わり、ソ連軍のポーランド侵攻に呼応してワルシャワで蜂起したレジスタンスは市街の一部を占拠するものの、反撃を開始したドイツ軍の前では準備不足の素人集団しかなく、きわめて固い決意で抵抗を続けながら下水にもぐったりドイツ軍の拠点を襲撃したりしているうちに町は瓦礫の山と化し、お約束のゴリアテも登場し、ステファンを含む十代の兵士たちは最後の拠点を捨てて脱出をはかる。 
けったいな邦題のせいでレジスタンスがガンカタを始めるのかと疑ったが、ワルシャワ蜂起に積極的に巻き込まれた十代の若者の話になっていて、その目の前で展開する人体破壊ぶりがすさまじい。爆発の直後に文字どおりに血と肉片が雨になって降り注ぐ、という描写を見たのは初めてである。銃弾や砲弾の破壊力を含め、凄惨な場面が作り込まれている一方、思いつきでやっているとしか思えないハイスピードショット(大胆なポストプロダクション加工入り)がところどころにはさみ込まれていて(これはこれで目を覆いたくなる)、そのせいで少々奇妙な映画になっている(とめるやつはいなかったのか)。さしあたり水準はクリアしているし、視覚的な面では収穫の多い作品だと思うものの、デザインに問題を抱えている。 


Tetsuya Sato

2015年12月4日金曜日

モンスター上司2

モンスター上司2
Horrible Bosses 2
2014年 アメリカ 108分
監督:ショーン・アンダース

モンスター上司を片付けたニックとカートとデイルの三人組は自分たちが自分の上司になることに決めて起業、新たなシャワーヘッドを開発に成功すると、そこへ通販会社を経営するバート・ハンソンから声がかかり、融資先を紹介してくれた上に10万個の発注をしてくれるので、さっそく工場を立ち上げて10万個の出荷準備を整えると、バート・ハンソンは注文をキャンセルし、倒産した会社を特許ごと競売で落としてあとは中国で生産すると宣言、すべてを奪われた三人組はバート・ハンソンに復讐するために息子のレックス・ハンソンを誘拐して身代金をせしめようとたくらむが、レックス・ハンソンにすぐに見破られてレックス・ハンソン自身が自分で自分を誘拐して父親から身代金をせしめる狂言誘拐に巻き込まれる。 
『モンスター上司』の続編。前作に引き続き三人組がジェイソン・ベイトマン、ジェイソン・サダイキス、チャーリー・デイ。ほぼ同レベルのアホウのレックス・ハンソンがクリス・パイン、そのいかがわしい父親がクリストフ・ヴァルツ。ケヴィン・スペイシーが再登場して三人組に罵倒を浴びせ、ジェニファー・アニストンは相変わらずのセックス狂で、ジェイミー・フォックスも引き続きなんだかよくわからないけれど、やっている本人はとても楽しそう。クリス・パインはいままでに見たなかでいちばん魅力的かもしれない。一作目と同様、密度が高くて構成に無駄がなく、しかもパワーアップしているような気配すらあるが、このあほらしさにはかなり疲れる。 

Tetsuya Sato

2015年12月3日木曜日

トポス(42) ヒュンは復讐を求めている。

(42)
 ピュンのことは忘れていたが、ギュンのことは覚えていた。青い魔法玉を見たときに、かすかな記憶がよみがえった。自分がいなければ、ギュンは何もできない男だった。自分が仕切ってやらなければ、ギュンには右も左もわからなかった。それなのにギュンは自分を裏切った。金を独り占めにした。だからあんなことになったのだ。刑務所にぶち込まれて、追われるはめになったのだ。
 気がついたときには、ヒュンは復讐を求めていた。裏切り者のギュンにこの世の地獄を味合わせなければならなかった。親兄弟を皆殺しにして、親戚もはとこの果てまで残らず殺して、爪を一枚ずつ引っこ抜き、指を一本ずつねじ切ってから鼻と耳をそぎ落とし、皮を剥ぎ、肉をえぐり、腕と脚を切り落とし、性器をむしり取って口に突っ込み、最後に目玉をえぐってやろうと考えていた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンは叫んだ。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
 ギュンを探さなければならなかった。青い魔法玉をたどっていけば、ギュンが見つかるはずだった。手がかりは予言者だ、とヒュンは思った。予言者を締め上げれば、ギュンが見つかるはずだった。それなのに、残らず殺してしまったのだ。一人くらい残しておくべきだったのに、一人残らず殺してしまったのだ。ヒュンは強い怒りを感じた。怒りのままに拳を握ってキュンの頬に叩きつけた。クロエの頬にも叩きつけた。
「なんだってんだ」キュンが叫んだ。
「このろくでなし」クロエが叫んだ。
「俺についてこい」ヒュンが言った。

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2015年12月2日水曜日

トポス(41) ギュンとピュンは復讐を求めている

(41)
 ギュンは復讐を求めていた。裏切り者のヒュンにこの世の地獄を味合わせなければならなかった。親兄弟を皆殺しにして、親戚もはとこの果てまで残らず殺して、爪を一枚ずつ引っこ抜き、指を一本ずつねじ切ってから鼻と耳をそぎ落とし、皮を剥ぎ、肉をえぐり、腕と脚を切り落とし、性器をむしり取って口に突っ込み、最後に目玉をえぐってやろうと考えていた。
 ピュンも復讐を求めていた。裏切り者のヒュンにこの世の地獄を味合わせなければならなかった。親兄弟を皆殺しにして、親戚もはとこの果てまで残らず殺して、爪を一枚ずつ引っこ抜き、指を一本ずつねじ切ってから鼻と耳をそぎ落とし、皮を剥ぎ、肉をえぐり、腕と脚を切り落とし、性器をむしり取って口に突っ込み、最後に目玉をえぐってやろうと考えていた。
 求めるものがまったく同じだったので、ギュンはピュンを疑っていた。抜け駆けをするのではないかと疑っていた。優先権は自分にあると信じていた。
 求めるものがまったく同じだったので、ピュンはギュンを疑っていた。抜け駆けをするのではないかと疑っていた。優先権は自分にあると信じていた。
 ピュンが背中を向けると、ギュンは疑いの目をピュンに向けた。
 ギュンが背中を向けると、ピュンは疑いの目をギュンに向けた。
 予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年12月1日火曜日

トポス(40) ミュンはギュンとピュンを仲間に迎える。

(40)
 ピュンは刑務所でギュンと出会って、ギュンと一緒に脱獄した。ピュンとギュンが中庭にいるところへヘリコプターが降りてきて、看守が驚いているあいだに二人を乗せて飛び立った。操縦していたのは白髪を乱した予言者だった。脱獄を仕組んだのはミュンだった。ミュンは究極の魔法玉を求めていた。ギュンはそれを作ると約束した。究極の魔法玉は特別な材料を必要とした。その材料を手に入れるためにミュンは予言者の大群を軍の秘密基地に送り込んだ。予言者たちは聞けっと叫んで兵士たちに襲いかかった。予言者たちが投げつけた魔法玉が火を放ち、雷を放ち、地面を激しく躍らせた。予言者たちが基地を占領するとギュンとピュンがヘリコプターで送り込まれた。究極の魔法玉の材料は基地の地下深くに隠されていた。それを見てピュンが目を丸くした。
「こいつはいったい?」
「宇宙人を見るのは初めてか?」ギュンが言った。「宇宙船が墜落して捕まって、もう五十年もここに監禁されている」
「材料って、こいつらなのか?」
「そうだ。魔法玉の材料にする」
 予言者たちが宇宙人を檻から手荒く引きずり出した。ギュンがピュンにハンマーを渡した。ピュンがハンマーを振り上げて宇宙人の灰色の頭を叩き割った。予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年11月30日月曜日

トポス(39) ヒュン、見てはならないものを見る。

(39)
 木に縛りつけて時間をかけて切り刻むと、売人の口が軽くなった。村のはずれの木のうろに注文書と金を入れておくと、夜のあいだに魔法玉に交換されるという。誰がそれをやっているのか、見たことはなかった。誰がやっているのか、見てはならないと言われていた。
「そういうことなら」とヒュンが言った。「俺がこの目で確かめてやる」
 売人から聞き出した木のうろに紙の束を押し込んで、藪に隠れて夜を待った。夜中を過ぎたころになって、白髪を乱した予言者が杖をついて現われた。一人ではなかった。二人でもなかった。あとからあとからやって来て、数十人で木を囲んだ。一人が木のうろに手を入れて紙の束を引っ張り出した。予言者たちが怒り始めた。杖をふりかざして怒りを叫ぶと、暗雲が、とか、雷が、とか、この声を聞けっといった声が切れぎれに聞こえた。クロエが立ち上がって突進した。腰だめに構えたショットガンで予言者たちに散弾を浴びせた。白髪を乱した予言者たちが次から次へと、白い衣を鮮血で染めて倒れていった。だが半分を片付けたところで弾が尽きた。生き残った予言者たちがこの声を聞けっと叫んで杖を振った。そのあいだにヒュンが背後にまわっていた。古い銃で数人をしとめ、弾がなくなると剣を抜いて予言者たちの背中を突いていった。倒れてうめいている者はキュンが羊飼いの杖を使ってとどめを刺した。生き残った者はいなかった。死体が山ほども転がったが、クロエの心は晴れなかった。

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2015年11月29日日曜日

トポス(38) ヒュン、冒険の仲間にキュンを加える。

(38)
 キュンは旅に焦がれていた。ヒツジやヤギの世話から逃げ出して未知の世界に飛び込んで、思うままに冒険がしたいと考えていた。
「なにしろ俺は若いのだから」とキュンは思った。「何にだってなることができる。英雄にだって、なることができる」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「あんたの運命を分けてくれ」とキュンが言った。「俺も世界を救う英雄になる。だから俺も邪悪な黒い力と戦うんだ」
 ヒュンとクロエは羊飼いのキュンを仲間に加えた。三人で強い酒を酌み交わし、夜になるとヒュンとクロエがともに休んだ。二人の寝床から言葉にならない声がもれた。キュンはそれを最後まで聞いた。
「親方に挨拶をする」
 朝になるとキュンが言った。親方の家は山をひとつ越えた先にあった。前掛けをかけて出てきた寝ぼけ顏の親方を、キュンは羊飼いの杖を振って殴り倒した。倒れた親方を蹴りつけて、顔に向かって唾を浴びせた。続いてヒュンとクロエが家に飛び込み、めぼしい物を奪い取った。古い銃があったので、ヒュンはそれを肩にかけた。親方の妻と息子がおびえていた。クロエが家に火を放った。親方の妻の髪に火がついて、火だるまになって転がるのをクロエは笑って見下ろしていた。動かなくなるまで笑っていたが、それでもクロエの心は晴れなかった。
 青い魔法玉は親方がキュンに与えたものだった。親方は村の売人からそれを手に入れていた。ヒュンとクロエはキュンを連れて村へ行った。堂守の小屋で売人を見つけて取り囲んで締め上げた。

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2015年11月28日土曜日

トポス(37) ヒュン、宝箱をこじ開ける。

(37)
 ヒュンとクロエは手配を逃れ、街道を避けて山道を進んだ。山は危険に満ちていた。忍び寄る小鬼を追い払い、オークの気配を察して藪に散弾を撃ち込んだ。姿がどうであろうと怪物だと思えば剣を抜いて斬りかかって、道を切り開かなければならなかった。ヒツジやヤギを捕えて空腹を満たし、陽が暮れると木の根を枕に横たわり、夜明けとともに起き出して旅を続けた。旅人に出会うと笑顔で近づいていって前方にひそむ危険や罠を探ろうとした。なかなか口を割ろうとしない旅人は疑わしいのでヒュンが剣で突き殺した。あるいはクロエがショットガンで吹き飛ばした。至近距離で散弾を浴びた旅人がはらわたを見せて転がっても、クロエの心は晴れなかった。
 山をひとつ越えたところで一軒の小屋に行きあたった。扉を蹴破って小屋に入って、金目の物を探して部屋を荒らした。めぼしい物が何もないのに怒ったところで宝箱に気がついた。ヒュンが宝箱をこじ開けようとしていると、今度はクロエがひとの気配に気がついた。部屋の隅の暗がりで誰かが息を殺していた。クロエがショットガンを構えて近づいていった。暗がりを破って若い羊飼いが進み出た。純朴そうな目をしていた。ヒュンは羊飼いの様子を横目に見ながら宝箱をこじ開けた。透き通るような光を放つ青い魔法玉が入っていた。
「おっと」とヒュンが声を上げた。「こいつはなんだか、見覚えがあるぜ」

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2015年11月27日金曜日

トポス(36) 冒険者たちは他人の家に押し入って宝箱をこじ開けにかかる。

(36)
 魔法玉の製造と販売を禁止する法律が成立して工場の認可も小売店の営業許可も取り消されると魔法玉産業は地下にもぐった。どの町でも魔法玉屋の看板が消え、裏通りを根城にする売人たちは粗悪な魔法玉を懐に隠して通行人に声をかけた。粗悪な魔法玉はよくポケットの中で爆発した。いきなり解放された魔法の力が酒場の隅で、寝室やパーティ会場で、あるいは中ボスとの対決の最中に、居合わせた者にやけどを負わせ、雷撃を加え、氷点下の地獄を味合わせた。それでも需要に変わりはなかったので粗悪な魔法玉の流通は続いた。魔法玉を買った者は持ち歩く代わりに宝箱に入れて封印した。そうとわかると金のない冒険者たちは他人の家に押し入って宝箱をこじ開けにかかり、見つかると宝箱の持ち主に襲いかかって金品を奪った。凶悪な事件が次々に起こり、警察の捜査は常に後手にまわっていた。捜査官たちは魔法玉の品質が変わってきていることに気がついた。粗悪な魔法玉はいつの間にか駆逐され、中級品以上が市場に多く出回っていた。ときには極上品も見つかった。捜査官たちは確信した。質の高い魔法玉を供給する秘密のルートが存在する。売人たちを締め上げていくうちに、いくつかのおぼろげな線が浮かび上がった。どの線も街道の南につながっていた。捜査官たちは街道の南に注目した。予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年11月26日木曜日

トポス(35) ヒュン、クロエとともに逃走する。

(35)
 ヒュンとクロエは魔法玉工場の塀を越えた。警備員の姿がどこにもない。倉庫は空で、材料棚は埃をかぶり、小鬼を閉じ込めていたはずの檻はネズミたちの巣になっていた。しつこく垂れ下がるクモの巣をヒュンが剣で切り落とした。
「何があったんだ?」
 クロエが留守番をしていた老人を見つけた。
「知らねえのかい?」老人が言った。「新しい法律ができたんだ。魔法玉は売るのも作るのもご法度だ」
「そいつはまいった」
「でも俺は運がいい」老人が続けた。「みんなクビを切られちまったが、俺はとにかく仕事をもらえた」
「残ってないのか?」
「ちったあ残ってる」老人が笑った。「ちゃんと隠してある。おまえらには見つけられねえ場所に隠してある」
「いくらなんだい?」
「いくら持ってる?」
「俺が聞いてるんだ」
「さては文なしか?」
「俺が聞いてるんだ」
「文なしに用はねえ」
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
 ヒュンが腰の剣を抜いた。クロエがショットガンを老人に向けた。老人が懐に手を差し入れて魔法玉を取り出した。老人が叫んだ。
「使うぞ」
 クロエのショットガンが火を噴いた。老人が倒れた。ヒュンが駆け寄って懐を探り、魔法玉が入った袋を見つけ出した。クロエが工場に火を放った。燃え上がる炎を背に二人は夜の闇に駆け込んでいった。

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2015年11月25日水曜日

トポス(34) 千年にわたる平和と繁栄は崩壊の危機に瀕している。

(34)
 チュンの王国が崩壊するまでは単なる公然の秘密であったことが、チュンの王国が崩壊するのと同時に国家を震撼させる事件になった。魔法玉産業と政財界の癒着が暴露され、醜聞は政府の最高位とその身内にまで及んだが、政府は無難な地位にある数人の地方官吏を戒告処分にしただけで幕引きにかかった。しかし正義に目覚めた地方検事が独自の調査によって政府高官の告発に踏み切り、それが引き金となって政財界の重鎮の大量逮捕が始まると、有識者の一部から魔法玉が善良な市民の魂を堕落に導いているという声が上がり、この声に賛同する善良な市民が全国から集まってプラカードを掲げて行進を始めた。善良な市民からなるこの集団は行動の一環としてそろいの腕章をつけて道をふさぎ、通行人の持ち物を調べて魔法玉を没収した。魔法玉を売る店の前で集会を開き、悪臭がする白いペンキを店に浴びせた。対抗する市民集団は腕章をつけた市民に魔法玉で反撃を加え、衝突が全国各地で多発して、騒動に便乗した貧困層が店のショーウィンドウを叩き割って商品の略奪を繰り返した。情勢は不穏の一色に染まり、先行きへの懸念から株価が下がり、資本が海外へ逃げ出し、貨幣価値が急落した。二桁台で進行するインフレーションが家計を圧迫し、失業率が跳ね上がり、取り付け騒ぎを恐れた金融機関は窓口を閉ざして涙を流しながら死に絶えていった。千年にわたる平和と繁栄は崩壊の危機に瀕していた。予言が成就しつつある、とミュンが言った。

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2015年11月24日火曜日

トポス(33) ヒュン、クロエとともに冒険の旅に出る。

(33)
 ヒュンとクロエはクロエの家で暮らし始めた。クロエはヒュンのために食事を作り、ヒュンのために床を整え、ヒュンの服の洗濯をした。ヒュンはどこからか羽根飾りがついた帽子を見つけてきて、それをかぶって剣を腰に吊るして町へ出かけた。友達を作り、友達のおごりで酒を飲んだ。したたかに酔って家に帰るとクロエが怒り狂っていた。
「ろくでなし」とクロエが叫んだ。「ただ飯食らいの甲斐性なし」
 クロエが皿を投げつけた。ヒュンがクロエを殴りつけた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「ごくつぶし」とクロエが叫んだ。「大酒飲みの色ぼけ野郎」
 クロエが皿を投げつけた。ヒュンがクロエを殴りつけた。
「許さない」
 クロエがショットガンをヒュンに向けた。クロエの指がショットガンの引き金にかかった。ヒュンがクロエの目を見つめた。怒りに燃えるクロエの瞳をじっと見つめた。
「俺たちは距離を見失っている。だから旅に出よう。旅をしながら互いの距離を見つめ直すんだ」
 クロエの頬を涙が伝った。ヒュンとクロエは夜を過ごし、朝を迎えて起き出すと旅に出るしたくを整えた。ヒュンは名もない剣を腰に吊るし、クロエはショットガンを肩にかけた。二人の前に道が開けた。
「だがその前に」とヒュンが言った。「魔法玉を少し手に入れておこう」

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2015年11月23日月曜日

トポス(32) ヒュン、クロエと再会する。

(32)
 職を失った人々を棍棒を持ったロボットたちが追い散らした。橋の下や地下室に逃げ込んだ人々を棍棒を持ったロボットたちが追い散らした。一方、目先の利く人々は進んで時代の流れに飛び込んでいった。金貸しは大金を稼ぎ出した。銀行は貸し剥がしに乗り出し、債権は束で売り飛ばされ、裁判官は執行命令の束に署名した。商店や住宅や農地が次々に差し押さえの対象になり、不法に居座ろうとする無法者を追い出すために棍棒を持ったロボットたちが送り込まれた。斧を取って抵抗しようとする者もいたが、ロボットに囲まれて棍棒で打たれた。血で書かれた陳情書が市長の前に届けられたが、市長はその紙を丸めて靴の汚れを拭い取った。
 くくくくく、と市長が笑った。
 くくくくく、とロボットが笑った。
「許さない」とクロエが叫んだ。
 クロエのショットガンがロボットたちを吹き飛ばした。金貸しは蜂の巣にされ、裁判官は尻に散弾を撃ち込まれた。クロエはショットガンの弾倉に弾を詰めて市庁舎へ走った。市長はヒュンを解放した。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「邪悪な黒い力がいま、ここに迫っている」と市長が言った。「おまえが英雄なら、行っておまえの運命と戦ってみろ」
 ヒュンは羽根飾りがついた帽子をかぶり、名もない剣を腰に吊るした。クロエがショットガンをヒュンに向けた。
「ろくでなし」とクロエが叫んだ。「口先だけの嘘つき野郎」
 ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「俺は心を入れ替えた。だから一緒にやり直そう。そして運命を分かち合おう」
 クロエの頬を涙が伝った。

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2015年11月22日日曜日

コードネーム U.N.C.L.E.

コードネーム U.N.C.L.E.
The Man from U.N.C.L.E.
2015年 アメリカ/イギリス 116分
監督:ガイ・リッチー

CIAのエージェント、ナポレオン・ソロは東ベルリンを訪れて自動車整備工ギャビー・テラーの身柄を確保してギャビー・テラーの父親で核物理学者のウド・テラーの行方を探るとナチの残党がウド・テラー博士を働かせて核武装をたくらんでいることがわかり、これは東西両陣営の危機だということで、KGBから派遣されたイリヤ・クリヤキンとともにイタリアへ飛んで陰謀を探る。 
ナポレオン・ソロがヘンリー・カヴィル、イリヤ・クリヤキンがアーミー・ハマー、ウェーバリーがヒュー・グラント。いわゆる『0011ナポレオン・ソロ』の映画化だが、U.N.C.L.E.は組織の名前ではなく、ナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンの暗号名ということになり、したがって本部ビルもなければアンクル・スペシャルもアンクルカーもない。スラッシュも登場しない、ということで、シリーズ序盤の雰囲気を踏襲した、ということになるのかもしれないが、60年代的な悠長さまで踏襲することにしたのか、少々だるい。シリーズ序盤の悠長さはどちらかと言えば低予算に起因しているはずなので、踏襲するにしても何かしらの工夫がほしかった。スプリットスクリーンはガイ・リッチーのサインなのかもしれないが、あまり効果を上げていないし、60年代という背景をわざわざ選択している理由もよくわからない。時代への関心がないような気がした。ヘンリー・カヴィルのナポレオン・ソロはいまひとつ余裕を欠いている。アーミー・ハマーのイリヤ・クリヤキンはロシア人に見えてこない。破綻があるわけではないし、とにかくバランスを保ってまとまっているし、ところどころにいいところもあるけれど、作品としての落としどころが見えてこない、というかぱっとしない。企画があったので、それをただ撮っただけではないのか、と疑っている。 



Tetsuya Sato

2015年11月21日土曜日

アイ・フランケンシュタイン

アイ・フランケンシュタイン
I, Frankenstein
2014年 オーストラリア/アメリカ 92分
監督:スチュアート・ビーティー

フランケンシュタインの怪物はフランケンシュタイン博士の死体を墓地に葬り、そこへ現われた悪魔が怪物に襲いかかり、それを見たガーゴイルの戦士が悪魔と戦い、ガーゴイルの戦士たちが大天使ミカエルの命を受けて悪魔の王子ナベリアスが率いる悪魔の軍勢と戦っているという構図があきらかにされ、ガーゴイルの女王はフランケンシュタインの怪物をアダムと名づけて聖堂に匿おうとするが、怪物は誘いを断って人跡未踏の地へ逃れ、それから二百年ほどが経過して、再び悪魔が現われて怪物を襲うので、怪物は自衛のために悪魔を倒す決意をして人間のいる世界に戻り、早速悪魔を殺しているとそこをガーゴイルに見つかって勝手なことをするなとたしなめられて監禁され、一方、ナベリアスは魂を欠いた肉体を大量生産して悪魔をそこに入れて大軍団を作ろうとたくらみ、そのたくらみを実現するためにかれこれ二百年もフランケンシュタイン博士の怪物を狙っていたことがあきらかになり、ガーゴイルの聖堂に襲撃を加えてフランケンシュタイン博士のノートを手に入れたナベリアスは実験を進め、監禁から逃れた怪物はナベリアスのたくらみに気づいて悪魔の本拠地に乗り込み、ナベリアスのために働いている人間の科学者テラ・ウェイドに真相を告げる。 
グラフィック・ノベルの映画化らしい。アーロン・エッカートの怪物は決して悪くないものの、このひとにはもう少しまともな仕事をしてほしい、という気がしないでもない。ビル・ナイが悪魔の統領で登場するが、これはいつものB級悪役版ビル・ナイをそのままやっているだけ。ガーゴイル側は自覚として事実上の自警団で、対する悪魔側は例によって資本が潤沢でスーツなどを着ていたりするが、双方の拠点が見たところ2ブロック以上は離れていないのに延々と闘争をひきずっているのだとすれば、たぶんどちらもまじめに仕事をしていない。全編ほぼグリーンスクリーンかセットで、雰囲気はどうにか出ているがそれほどお金はかかっていないしCGも少々安っぽい。ただ、お金がかかっていないところを勢いで突破しようとしている気配はあって、話は間抜けでもテンポは速いし、時間を無駄にしていない。 


Tetsuya Sato