2017年10月10日火曜日

ダッズアーミー

ダッズアーミー
Dad's Army
2016年 イギリス 99分
監督:オリバー・パーカー

1944年、連合軍がフランス侵攻を間近に控えていたころ、ドーバーの小さな町でホームガード(国防市民軍)の隊長を務めるマナリング氏はドイツのスパイを警戒せよとの命令で海岸一帯のパトロール任務に就くことになるが、それとときを同じくして美貌の女性記者ローズ・ウィンターズがロンドンから到着してホームガードの取材をすると告げるのでマナリング氏以下ホームガードの隊員たちは激しく興奮することになり、マナリング氏がウィンターズ嬢に粉をかければホームガードの軍曹でマナリング氏が支店長を務める銀行の行員であり、オックスフォードの出身でもある高学歴のウィルソン氏は(経緯はまったくあきらかにされないものの)ウィンターズ嬢がかつての自分の教え子であり、師弟恋愛寸前の関係にあったことをただちに思い出し、ホームガードの二等兵で偏平足で軍隊にいけなかったパイク青年はウィンターズ嬢にすぐさま恋して地元の娘ヴェラとの関係を劇的に終わらせ、同じく二等兵で地元で闇屋をしているウォーカー氏は自分の仕入れ先をウィンターズ嬢にべらべらとしゃべり、そしてもちろんドイツのスパイでコブラの暗号名を持つウィンターズ嬢はホームガードの男どもを手玉に取って地元の女性本土防衛隊(隊長はマナリング氏の奥さん)の反発を買いながらウォーカー氏を利用してドーバー要塞の秘密に接近する。
Amazon Primeで鑑賞。1968年からおよそ10年ほどBBCで放映されたTVシリーズの映画化で、話はケン・フォレットの『針の目』とほぼ同じ。マナリング氏がトビー・ジョーンズ(たしかフランク・ダラボンの『ミスト』で店長をやっていたひと)、ウィルソン氏がビル・ナイ、ウィンターズ嬢がキャサリン・ゼダ=ジョーンズ、ホームガードの間抜けな兵隊のなかにはマイケル・ガンボンが混じっているという豪華キャストで冒頭のロンドンを含めて大戦下の様子などは雰囲気があるが、全体としては非常に古めかしいコメディを古めかしい演出でやっていて、その全体としてゆるめの雰囲気を俳優たちが非常にリラックスして楽しんでいる。こちらとしてはなにかしらモダンな毒気がほしいところだが、こういうコメディもたまには必要であろう。
Tetsuya Sato

2017年9月28日木曜日

ウォークラフト

ウォークラフト
Warcraft
2016年 中国/カナダ/日本/アメリカ 123分
監督:ダンカン・ジョーンズ

オークの世界は邪悪なフェルの魔法のせいで滅亡の危機に瀕していて、そのフェルの魔法を使うオークのウォーロック、グルダンはフェルの魔法によって門を開いてオークの全氏族によるアゼロス侵攻を計画、先遣隊が派遣されてアゼロスの民に襲いかかり、同時に残るオークを招き入れるための巨大な門の建設が始まるので、事態を察したアゼロスの騎士ローサ―は国王レインを説得して守護者メディヴを召喚、メディヴは魔法によってオークの先鋒を撃退するがメディヴの行動にはどこか混乱があり、一方、グルダンの強引な手法に疑問を抱いたオークの族長デュロタンは人間との共闘を画策、レイン王と会うことに成功するものの自らは窮地に陥り、メディヴと意見のあわないローサ―はレイン王によって幽閉され、そうこうするうちに巨大な門が完成する。
同名のMMORPGの映画化。MMORPGには近づいたことはないが、草分け時代の『WARCRAFT』『WARCRAFT II』にはけっこう時間を費やしている。監督は『月に囚われた男』のダンカン・ジョーンズで、どちらかといえば雑なプロットを勢いで押し切りながらテンポよくまとめている。つまり、ちょっと見てみるつもりで見始めたら、結局最後まで見てしまった。アゼロス側の造形は例によって例のごとくだが、オークがたいそう愛情深く造形されていて、同じ個体は見当たらないし、デュロタンなどはドレッドヘアをうしろでめとめていたりする。ちなみにアゼロス王がドミニク・クーパーで、その王妃がルース・ネッガ、という取り合わせがamazonで放映中の『プリ―チャー』とかぶるので、あの低劣な番組の主人公がこちらではそれなりに高潔だったりするとなにか微妙な違和感がある。
Tetsuya Sato

2017年9月23日土曜日

エイリアン:コヴェナント

エイリアン:コヴェナント
Alien:Covenant
2017年 アメリカ/イギリス/オーストラリア/ニュージーランド/カナダ 122分
監督:リドリー・スコット

冷凍睡眠状態にある入植者2000人を乗せた星間移民船コヴェナントが目的地オリガエ-6まであと七年あまりというところへ進んだころに恒星のフレアによる事故が起こり、叩き起こされた乗組員は謎のシグナルを受信、調べたところその発信源はオリガエ-6よりも入植に適した惑星だったので、冷凍睡眠装置の事故を目撃してポッドに戻りたくない乗組員はコヴェナントの進路を変更してその惑星を目指し、惑星の軌道に入ると着陸船を送って発信源を探りにかかり、行方不明になった調査船プロメテウスの手がかりを発見していると乗組員が一人二人と倒れ、なにやら恐ろしい経験をしているうちに凶暴な怪生物の襲撃を受け、調査船プロメテウスの生存者で嘘つきアンドロイドの「デヴィッド」と遭遇する。コヴェナントの乗員で良いアンドロイド「ウォルター」がマイケル・ファスベンダー、悪いアンドロイド「デヴィッド」がマイケル・ファスベンダー、あとは死ぬために登場する顔のないひとたち。エイリアンはほぼ添え物で、内容は純粋に『プロメテウス』の続編であろう。そして『プロメテウス』が最初から最後までピーター・オトゥールの物まね大会に終わっていたら傑作になっていたかもしれないのと同様に、『コヴェナント』は最初から最後までデヴィッドが出ずっぱりで悪の限りを尽くしていれば傑作になっていたかもしれない。視覚的な驚きはすでにないし、どこかで見たようなシチュエーションの繰り返しは眠りを誘う。
Tetsuya Sato

2017年9月21日木曜日

怪盗グルーのミニオン大脱走

怪盗グルーのミニオン大脱走
Despicable Me 3
2017年 アメリカ 90分
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ

1980年代の悪役専門子役バルタザール・ブラットが80年代を醜悪にひきずって本物の悪役になっていたころ、悪役を廃業したグルーのところではグルーはすでに悪役ではないという理由でミニオンが離反、新たなボスを求めて旅に出るが、言わば「困窮の末」に犯罪に走り、ステージで大喝采を浴びたあとで全員で刑務所にぶち込まれると強靭無比の不死身属性と数を頼みに囚人たちの上に君臨し、一方グルーは双子の兄弟ドルーの存在を知り、そのドルーから自らの出生の秘密を知り、あれやこれやがあったあとで兄弟でバルタザール・ブラットと対決する。
スティーブ・カレルはグルー/ドルーの二役をこなしていて、さすがの芸達者ぶりには感心した。ちなみにバルタザール・ブラットの声がトレイ・パーカーなわけだけど、これにはなにか意味があったのか(残念ながら格別おもしろくない)。作品自体は安定した形で無難に水準をクリアしている、という感じだが、ミニオンのレビューと恐怖の刑務所生活でだいぶ嵩上げされている。ということで、やっぱりミニオンは強いのである。
Tetsuya Sato

2017年9月20日水曜日

SING/シング

SING/シング
Sing
2016年 アメリカ 108分
監督:ガース・ジェニングス

子供のころに劇場に魅せられたバスター・ムーンは洗車をしている父親の助けで劇場の支配人になるものの、失敗が続いて倒産寸前という状態に追い込まれ、起死回生の方策として素人歌謡コンテストを考え出すが、秘書兼助手のカメレオン、ミス・クローリーが賞金の数字を2桁間違えたポスターを作ってそのまま町にばらまくので高額賞金につられた参加希望者がすぐさま劇場前に列を作り、そこでバスター・ムーンはオーディションに取りかかって才能のある数人を選ぶとそれぞれにテーマとスタジオを与えて訓練にかかるが、電気はとめられ、水道もとめられ、資金に窮して往年の大歌手ナナ・ヌードルマンに援助を仰ぎ、そのための準備を整えるとその準備が老朽化した劇場にたたって惨事が起こり、劇場は倒壊、廃墟は銀行に差し押さえられ、先行きを見失ったバスター・ムーンは落ちるところまで落ちていく。
同じILLUMINATIONの作品でもなんとなく消化不良の気味があった『ペット』に比べるとかなりいい。余計なひねりを加えずに正攻法のストーリーで骨格を作って、その細部を充実させることで密度の高い作品になっている。バスター・ムーン役のマシュー・マコノヒーをはじめ声優陣も豪華だし、コミュニケーション不能な日本人グループ、キューティーズもちょこまかしていてかわいらしい。
Tetsuya Sato

2017年9月19日火曜日

マグニフィセント・セブン

マグニフィセント・セブン
The Magnificent Seven
2016年 アメリカ 133分
監督:アントワーン・フークア

南北戦争終結からおよそ10年後、六つだか七つだかの自治体で法執行を代行するサム・チザムが賞金稼ぎの腕を見せていたころ、小さな開拓村ローズ・クリークでは開発業者バーソロミュー・ローグが金の採掘のために極悪な手段で地上げをしていて、事実上の立ち退き命令に遭遇したローズ・クリークの住民たちは自らが拓いた土地を守ることを決意するが農民ばかりなので次の手に進めずにいるうちにバーソロミュー・ローグによって夫を殺されたエマ・カレンがサム・チザムを発見、事情を説明するとサム・チザムは仲間を集めにかかり、あれやこれやで七人になるとローズ・クリークの町に奇襲をしかけてバーソロミュー・ローグが雇った警備員を排除、町を要塞化するとともに弾薬確保のためにバーソロミュー・ローグの金鉱を襲撃して鉱夫若干を味方に引き入れ、そうしているとバーソロミュー・ローグの軍隊が押し寄せてくる。
サム・チザムがふつうに貫禄のデンゼル・ワシントン、仲間がクリス・プラット、イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオなどのほか、なぜかイ・ビョンホン。サム・チザムを味方に引き入れるエマ・カレンがヘイリー・ベネット、無駄に悪事の多いバーソロミュー・ローグがピーター・サースガード。登場人物はいずれもよく造形され、まったく美人ではないヘイリー・ベネットがたいそう魅力的に撮られている。
時代を反映してか、農民対盗賊という関係は農民対産業資本に変更され、資本主義を賛美するバーソロミュー・ローグの軍隊が金で雇われた男たちなら農民につく七人もただ飯にありつくために集まったわけではなく、それぞれが名のあるプロで主人公のサム・チザムに至っては個人的な理由まで抱えている。そしてサム・チザムが状況に深く関わっているのと、そしておそらくは農民たちがほぼ善良な無力者として描かれている関係で、勝ったのは農民たちだという台詞はこの映画には登場しない。代わりにエマ・カレンが男たちの崇高さをたたえるが、たぶんこれでは単純すぎるし何か付け焼刃のような気がしてならない。素材を近代化する過程で重要なものが欠落したのではあるまいか。とはいえ銃撃戦の造形はおおむね古典的で(極端に少ない硝煙も含めて)、最近の西部劇(『3時10分』とか『ジャンゴ』とか)のようになっていないところは好ましいし、アントワーン・フークアだという理由でほとんど期待していなかった、というところもあって、それほど悪くない。
Tetsuya Sato

2017年9月15日金曜日

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
Trumbo
2015年 アメリカ 124分
監督:ジェイ・ローチ

ダルトン・トランボが赤狩りでハリウッドから排除され、偽名で活動を続けて『スパルタカス』『栄光への脱出』で復帰の足掛かりをつかみ、名誉が回復されるまで。
ジェイ・ローチの演出はいまひとつ芸が足りないが、ブライアン・クランストンが面白いのでさしあたり見ていて飽きるということはない。ブライアン・クランストンを見る映画であろう。ジョン・ウェイン役のデヴィッド・ジェームズ・エリオットがまったくジョン・ウェインに似ていないのは確信犯なのだろうか。カーク・ダグラス役のディーン・オゴーマン、オットー・プレミンジャー役のクリスチャン・ベルケルがモデルになった本人の適切なパロディになっているのとなにやら対照的である。地味ではあるがトランボ夫人を演じたダイアン・レインが非常にいい感じであった。
Tetsuya Sato