2011年11月12日土曜日

ソダーバーグ『コンテイジョン』(2011)

コンテイジョン(2011)
Contagion
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
香港での出張から帰国した女性が痙攣を起こして病院へ運ばれ、そのまま死亡するので解剖してみると未知のウィルスが発見され、東京でも男性がバスの中でいきなり死亡し、CDCがウィルスの解析を始め、WHOが感染経路の特定にかかり、そうしているうちに感染が広がり、ブロガーが怪しい情報を流し、軍隊が出動して移動が制限され、パニックが始まり、略奪が起こり、町は荒廃し、やがてCDCがワクチンの合成に成功するが、感染者の数に対してワクチンの製造が追いつかないので、待ち行列はとんでもない長さになり、ブロガーは陰謀説を持ち出し、ワクチン接種の優先順位をめぐってトラブルが起こり、事態は時間をかけて収拾されるが、事の起こりは自然環境の乱開発にあるという内容を、ほぼ完全にドキュメンタリー調でまとめていて、いわゆる映画的な文法は基本的に排除され、人物はたくみに素描されるが状況に対してつねに後景に退いている。つまり、きわめて洗練された架空のノンフィクションなのである。
映画が映画であるためには、必ずしも映画である必要はない、という大胆な、しかしきわめて頼もしい意思表示がおこなわれているものと解釈したが、それをわざわざオールスター・キャストでやるところがたぶんにソダーバーグなのであろう。いきなり死んで、死んだ魚のような目をして解剖台に横たわるのがグウィネス・パルトロー、CDCの職員で、死体袋が足りないせいでビニールで巻かれてしまうのがケイト・ウィンスレット、という有様で、面白がってやっているのか、それとも容赦がないと考えるべきなのか、そこのところがよくわからないものの、とにかく堂に入ったドキュメンタリーぶりにはとりあえず感心するしかない。マット・デイモンの平凡な市民ぶり、ジュード・ロウの得体の知れないブロガーぶりもなかなかによろしい。

Tetsuya Sato