2012年5月2日水曜日

MON-ZEN [もんぜん]

MON-ZEN [もんぜん]
Erleuchtung garantiert
1999年 ドイツ 108分
監督:ドーリス・デリエ


台所のセールスマンをしているウーヴェは家庭への無関心から妻に捨てられ、さびしさに耐えられずに風水師をしている弟グスタフを訪れ、そのグスタフはかねてから日本の禅寺で修業をする計画を立てていて、酔ったウーヴェは同行を望み、言わば酔ったはずみによってグスタフとともに日本を訪れ、まず東京のホテルに部屋を取り、食事のために町へ出て一杯飲むためにバーへ入り、そこで法外な請求をされて驚き、バーから出てくるとホテルへ戻る道がわからなくなり、タクシーは見当違いの方向へ二人を運び、残金が足りないという理由でATMに寄ったものの、クレジットカードを裏返しに入れて回収不可能になり、最後に残った三百円をパチスロにつぎ込んで瞬時にすり、言わば間抜けの限りを尽くした結果、無一文となった二人は段ボール箱にもぐって夜を明かし、段ボール箱はもうごめんだという理由でウーヴェはデパートで小型テントを万引きし、渋谷のスクランブル交差点で二人は離ればなれになり、グスタフは回転ずしで無銭飲食をした上に駅の地下で物乞いを始め、そこでドイツ娘のアニカと出会い、アニカに救われてウーヴェを発見し、兄弟はドイツ風のビヤホールのような場所でアルバイトをして金を稼ぎ、そもそもの目的地である能登半島、石川県輪島市門前町にある総持寺を目指して出発し、乗り換えが五回もある長い旅の末に寺に迎えられて修業に入り、早朝に起こされて冷水を浴び、座禅を組み、床を拭き、庭を掃き、托鉢をし、竹林に立って無常の心で空を見上げ、やがて清明な心を得ると寺を離れて東京へ戻り、心が清明だからなのか、あわててドイツ大使館へ駆け込む気配がない。
全編、手持ちのデジタルカメラによる撮影で、映画的な洗練にはほど遠いが、演出には確実な創意があり、目配りのよさとつなぎのよさでひとかどの映像に仕上げている。兄弟のキャラクターがよく造形され、状況に対する感受性の高さと適応能力の高さが面白い。その点は同じ「外人映画」であっても『ロスト・イン・トランスレーション』とは一線を画するところであろう。後半、曹洞宗の總持寺祖院の全面協力で撮影された修業風景は細部にわたり、なかなかに興味深いものとなっている。 


Tetsuya Sato