2012年5月12日土曜日

キング・コング(2005)

キング・コング
King Kong
2005年 ニュージーランド・アメリカ 186分
監督:ピーター・ジャクスン


1933年版を素材に慎重に味付けし、ダイナミックな映像をふんだんに仕込んで破格の冒険映画に仕立て上げている。アン・ダロウはただの食えない女優ではなく食えないボードビル芸人に変更され、その設定はコングとの関係構築で巧みに生かされ、ジャック・ドリスコルは映画の脚本家という立場に変更され、エイドリアン・ブロディがいつになく活発な演技を披露して興味深い。ジャック・ブラックのカール・デナムは手段を選ばぬ山師となり、そのカール・デナムが急いでいた理由、ベンチャー号の不自然なまでに多い乗員の数、さらに武器の潤沢さも設定が補強され、うまく説明されている。ナオミ・ワッツ扮するアン・ダロウはきわめて魅力的であり、対するコングのハードボイルドな親父ぶりも必見であろう。アン・ダロウとキング・コングのデート場面は涙なしには見ることができない。3時間を越える長尺だが、だれ場は一秒たりともなく、ベンチャー号がスカル島に接近する場面だけでもとてつもなくわくわくさせられた。壁を越えてからのバトルロワイヤルぶりも相当なもので、もちろん丸木橋も場面もきちんと強化した上で再現されており、オリジナルではやや不自然に見えた草食恐竜とのからみ方(すごい!)、ティラノサウルスとの大激闘(これもすごい!)も現代的な視覚表現を加えて大胆不敵に改変され、しかもウィリス・H・オブライエンによるかつてのアニメーションも豊富に引用されていて、その凝った映像ぶりにはただもうひたすらに息を呑む。エンパイアステート・ビルに登ったコングを攻撃する飛行機にはリック・ベイカーが搭乗していた模様。単なる不始末でしかなかった1976年版の不満はこれで完全に払拭された。文句なしの傑作である。






Tetsuya Sato