2012年5月9日水曜日

スパイダー・パニック

スパイダー・パニック
Eight Legged Freaks
2002年 アメリカ 99分
監督:エロリー・エルカイエム


有害廃棄物に汚染されて巨大化したクモの群れがアリゾナの小さな町を襲う。まず犬や猫が消えて、そのうちに人間が消えるようになり、やがて白昼堂々と姿を現わすようになる。犠牲者の凄惨な末路も含め、全編にわたって良くも悪くも出し惜しみがない。町長が作ったダチョウ牧場にはトタテグモが巣を張って次々とダチョウを引きずり込むし、人間ほどもあるハエトリグモの群れは荒野を飛び跳ねながらオフロード・バイクの群れを追いかける。この追跡劇は実に手が込んでいた。そうしているとタンクローリーがクモにたかられて爆発し、同時に電話線が吹き飛ばされるのでお約束どおりに町は孤立する。夜が訪れていよいよ図々しくなったクモは群れをなして町へ入り、ふと見上げると床屋の天井では二匹のクモが一人の客をぐるぐる回して糸に絡めている。保安官は町の人々を町長が作ったショッピングモールへと誘導し、クモはそれを追って集合し、そこへ本当に巨大なタランチュラも駆けつける。
退屈で古めかしい素材に遊びを加え、さらにひねりを利かせようという懸命な努力がおこなわれていて、だから登場人物はちょっと奇妙だし、残虐場面にはユーモアが味付けされている(猫が引っ張られる場面とかダチョウが引っ張られる場面とか)。クモの大群のコミック演出は少々難があったと思うけど、主人公たちは常識に基づいて状況にきちんと対処していたし、間抜けはいても阿呆はいないという人物構成で苛々する必要がまったくなくて、実によくできたモンスター映画だったのである。






Tetsuya Sato