2012年5月18日金曜日

戦争と平和(1965-1967)

戦争と平和
Vojna i mir
1965-1967年 ソ連 424分
監督:セルゲイ・ボンダルチュク


トルストイの「戦争と平和」を大真面目に映像化した6時間の超大作。ソビエト連邦という国家はただこの映画を作るためだけにこの世に生まれたのだと言って差し支えないだろう(同じような映画に 「ヨーロッパの解放」があるが、これは駄作) 。とにかくスケールが桁外れで、ほかの国でこんな映画が作れたとはとても思えないのである。しかもその仕上がりは 大蟻食も言っているように 原作を越えている。余計な説教は抜きにして、とにかくやるべきことをきれいにやっているのだ。キャスティングは原作のキャラクター・イメージそのまんまだし、戦闘シーンはソビエト陸軍大動員で、画面は人馬と砲列に埋め尽くされる。戦場に長大なレールを敷いて、ばらばらに展開するいくつもの小さな戦闘をワンショットで収めていたりもする。触りがアウステルリッツで、事実上のクライマックスはボロジノの会戦である。そしてもちろんモスクワはちゃんと炎上する。強いて難点をあげれば舞踏会のシーンに登場する男女の踊りっぷりが一目でバレエダンサーのそれととわかることくらいで、これはいささか妙な感じがする。だが傑作は傑作で、これを週末の午前中から見始めて、午後にかけてゆっくりと見終えると実に心地よい。なお、DVD/LDに収録されている画像は悲しいことにかなり退色が進行している。人類共通の財産と言ってもいいような映画なので、修復が望まれる。 




Tetsuya Sato