2012年5月27日日曜日

ワイルド7

ワイルド7
2011年 日本 108分
監督:羽住英一郎

自動火器で武装した銀行強盗の一団が人質を取って逃走すると、ワイルド7が出動して、ワイルド7のトレーラートラックが犯人の乗った車をぽーんと空中に投げ上げ、そこへバイクにまたがってワイルド7のメンバーが現われて犯人たちを退治すると、続いて製薬会社から国家機密級の殺人ウィルスが盗み出され、盗んだ犯人はウィルスを搭載した飛行船を東京上空に浮かべて二億ドルを要求するので公安調査庁の秘密機関PSUが群衆の中から犯人の所在を割り出し、ワイルド7が出動して事件を解決すると、ワイルド7の指揮官草波隊長がいったいどういう脈絡で思いついたのか、事件の直前における製薬会社の株の動きに注目し、事件の公表を遅らせて株で大もうけした人物がいると考え、それはPSUの主任情報分析官である桐生圭吾以外にないと推理すると、その桐生圭吾は相手が何も言わないうちから状況を察して自分は犯罪社会が引っくり返るような秘密をことごとく握っていると主張して草波隊長に挑戦し、察するによほどの秘密を握っているのであろう、桐生圭吾がパーティ会場の隅っこでそうつぶやいただけで桐生圭吾が握る秘密を恐れた政府は草波隊長の身柄を確保してワイルド7を指名手配するが、ワイルド7は警察の手から逃れてPSUを襲撃する、というような少々寝ぼけたような話と並行して深田恭子が復讐のために犯罪者を殺して歩いているのである。
この深田恭子に加えてさらにワイルド7の謎を追う新聞記者まで追加した結果、登場人物がインフレを起こして肝心のワイルド7のメンバーにしてからがほとんど消化されていない。というよりもワイルド7である必要があったとは思えないくらい希釈されていて、素直に深田恭子主演でアクション映画にしたほうがよかったのではないか、という気もしないでもない。もしかしたら『ワイルド7』という企画自体にあまり関心がなかったのではあるまいか。
キャラクターの未消化、要領を得ない脚本、意味のないモノローグ(なあにがランブルフィッシュだ)、アクションシーンのつなぎの悪さ、暴力性の不足、とあれやこれやの欠点が目立つ映画だが、撮影はそれなりにしっかりとしていてロケ効果を出しながら情報量の多い絵を作ることに成功しているし、セット、プロップ、バイクなどは非常によく出来ていて、つまり出来の悪い脚本も含めてあれやこれやの素材をまとめている、という点ではなにかしらまとまっていると言えなくもない。





Tetsuya Sato