2011年10月16日日曜日

エドガー・ライト『Spaced』(1999-2001)

Spaced(1999-2001)
監督:エドガー・ライト
脚本:サイモン・ペッグ、ジェシカ・スティーヴンソン


恋人に捨てられて恋人の部屋から追い出されにかかっている売れないマンガ家のティムと、現状のルームシェアリング(かなりすごい状態)にうんざりして部屋を探している売れないジャーナリストのデイジーが喫茶店でたまたま相席し、デイジーが新聞の不動産広告をにらんでは目当ての部屋を借りにいって誰かに先を越されるという状態を二週間も続けるあいだ、二人は同じ喫茶店で同じように相席を続け、ふと目を落とした広告に格安の2LDKがあり、ただしカップルであることが条件であったことから、ティムとデイジーは関係を偽装してその部屋を借り、共同生活を開始する。
BBCのTVドラマで、シーズン1、シーズン2の各7話で計14話。
ティムがサイモン・ペッグ、デイジーがジェシカ・スティーヴンソン、脚本もこの二人が共同で書いていて、ニック・フロストがティムの友人マイクの役で登場する。 
ティムは一種の『スターウォーズ』オタクという設定で、エピソード4、5、6とぶっ続けで見て感動の涙を流しているし(ただしシーズン2ではエピソード1を観たことでジョージ・ルーカスと決別している)、デイジーは言わば逃避の鬼で、仕事は二分半しか続かない。危険人物にしか見えないマイクは軍隊から追放された前歴(チーフテン戦車を乗っ取ってひとりでパリに攻め込もうとしたらしい)があり、アパートの大家もどこかおかしい上につねに唐突に出現し、下の部屋に住んでいる画家のブライアンはカンバスに怒りと痛みと恐怖をぶつけ、憎悪とともに生卵を粉砕している。 
エドガー・ライトのキャリアからするとこれが『ショーン・オブ・ザ・デッド』の前哨であり、『スコット・ピルグリム』に現われたような思い切りのよい映像の加工がすでにここでおこなわれている。演出はリズミカルで歯切れがよく、パロディ精神が豊かで、映画、テレビ、ゲームから豊富に引用がおこなわれ、リアリズムからの逸脱をまったくと言っていいほど恐れていない(サバイバルゲームで黄色いペイントボールが命中すると口から黄色い血を吐いて絶命する)。いわゆるシットコムとは異なる独特のコメディに仕上がっていて、とにかく遠慮のないばかばかしさが面白い。 

Tetsuya Sato