2011年10月26日水曜日

わたしなりの発掘良品『浮気なシナリオ』(1990)

浮気なシナリオ(1990)
A Chorus of Disapproval
監督・脚本:マイケル・ウィナー
原作・脚本:アラン・エイクボーン


海辺の小さな町にガイ・ジョーンズと名乗る男がやってくる。大企業の社員で、その町にある工場に転勤を命じられたからであったが、到着するやいなや新聞で素人演劇の出演者募集広告を見つけ出し、応募の電話をかけてオーディションに出かけていく。演目は『乞食オペラ』である。演出家は一人でウェールズにこだわっている弁護士で、その妻もまた芝居の出演者に名を連ねる。主要な配役はすでに決定されていたが、その配役には演劇とは無関係な力関係が作用していたようで、稽古はうまく進んでいない。演出家は出演者を罵り、演出家の妻はガイ・ジョーンズを見て胸をときめかせ、ときを同じくして企業による用地買収の噂が流れ、劇団にかかわる人々は土地の利害にもかかわる人々であったので、極秘情報を得ようとガイ・ジョーンズに群がっていく。そしてガイ・ジョーンズは亭主の知らぬ間に演出家の妻と逢瀬を重ね、ほかに機会があればそれも利用し、そうしていると小さな町の目に見えない利害関係の巻き添えを食い、その結果として舞台の端役から主役へとのし上がる。
ガイ・ジョーンズがジェレミー・アイアンズ、演出家がアンソニー・ホプキンス。まずアンソニー・ホプキンスの乗りのいい演技が楽しいし、ジェレミー・アイアンズの遠慮しているのかしていないのかさっぱりわからないニュートラルな風情がまた楽しい。もともとは舞台劇ということで、台本のよさに助けられるところが大きいが、マイケル・ウィナーの演出は細かなところまで含めて実に手堅くまとめている。何度見ても楽しめる傑作である。
浮気なシナリオ(字1・吹1) [VHS]

Tetsuya Sato