2011年10月10日月曜日

贖われた7ポンドの死体

贖われた7ポンドの死体
The Doctor and The Devil
1985年 イギリス 94分
監督:フレディ・フランシス

19世紀中葉のスコットランド。外科医ロック博士は人体解剖が医学の前進を実現すると唱える進歩主義者で、同じ見解を持つ進歩主義者の女性と事実上の同棲をおこない、保守的な姉や保守的な同僚から疎まれている。ところが法律による制約は人体解剖の対象を死刑囚に限っていたので解剖できる死体もおのずと限られることになり、その事実を嫌ったロック博士は自由になる死体を求めていかがわしい手段を選択する。墓地から盗掘された死体を買い取ったのである。そして貧民窟では死体が金になるという話を聞いた一人の男が相棒と一緒に死体を盗み、博士に売って味をしめ、博士やその助手が新鮮な死体を求めていることを知ると、利益を得るために新鮮な死体を作り始める。
進歩主義者のロック博士がティモシー・ダルトン、死体の製造に情熱を燃やし始める貧民窟の男フェロンがジョナサン・プライス。で、このジョナサン・プライスが本当にすごい。死体を売ってはジンを浴びるように飲み、あるいは闘鶏に手持ちの金を注ぎ込み、金をなくしてはまた死体を作り、それを繰り返しているうちに見境をなくし、ひとをひととは思わなくなっていく人物を、そのまんまにやっているのである。フレディ・フランシスは古典的な演出で全体を破綻なくまとめ上げ、そうして用意された確実な足場でジョナサン・プライスが最高の演技を披露している。そしてティモシー・ダルトン、ジュリアン・サンズ、ツィッギーもみないい味を出していて、結果としては並のホラーが裸足で逃げ出すくらいに恐ろしい映画に仕上がっているのである。

ちなみに、ほぼ同じシチュエーションを扱ったコメディがジョン・ランディスの『Burke and Hare』(2010)で、サイモン・ペッグとアンディ・サーキスが墓泥棒をする。日本では劇場公開の噂も聞かないし、ビデオが出るという噂もない。どうなってるんだ、この国は。


Tetsuya Sato