2011年10月10日月曜日

西部戦線におけるトンネル中隊


THE SILENT WAR 戦場の絆(2010)
Beneath Hill 60
監督:ジェレミー・シムズ
オーストラリア人の鉱山技師オリバー・ウッドワードは銃後にあって鉱山の開発にあたっていたが、トンネル中隊の編成を期に志願して入隊、中尉として西部戦線に送られて前線のトンネルで指揮にあたり、それからイープルに送られていゆわる60高地のドイツ軍陣地の地下に仕掛けられた600トンの爆薬を出水とドイツ軍の探知から守る任務にあたり、地下25メートルで声をひそめて水を汲みだし、ドイツ軍が掘り進むトンネルの気配に耳を澄ませ、見事に爆薬を守り抜いて60高地の爆破を成功させる。
トンネル中隊を扱ったオーストラリア製の戦争映画。リデル・ハートの『第一次世界大戦』では賛辞をもって、ただし二行で片づけられている作戦を腰のすわった演出と細部へのこだわりで見事に再現した傑作である。なにしろトンネル掘りの話なので、ほぼ全編が狭いトンネルのなか、登場人物も10人ほどに限られているが、人物はきっちりと造形され、状況はよどみなく消化され、いったんトンネルから出ると説得力をもって戦線が広がり、砲弾の雨が降り注ぐ。西部戦線でトンネルを掘っていた連中がいたことは知っていたが、それがいわゆる兵士ではなくて事実上の鉱夫であったことは初めて知った。聴音器を使った対抗トンネルの探索を映像で見るのも初めてで、カナリアやロウソクといった小道具の扱いもうまい。 
THE SILENT WAR 戦場の絆 [DVD]


Tetsuya Sato