2011年10月23日日曜日

ランゴ

ランゴ(2011)
Rango
監督:ゴア・ヴァービンスキー

不慮の事故で砂漠を横切るフリーウェイに投げ出された孤独なカメレオンはタイヤの礎となったアルマジロの示唆を受けて水に焦がれる町を訪れ、そこで大言壮語をおこない、食物連鎖の頂点にあるタカを偶然の力で倒すので、住民の信頼を勝ち取り、町長の甘言に乗って町の保安官に任命され、町から失われた水を取り戻すために自警団を率いて砂漠を進み、陰謀の存在に気づいて正体を暴かれ、つまるところはほかの誰でもないという自分自身を砂漠に映し出された幻影の中に発見する。マカロニ・ウェスタンにオマージュをささげたきわめて構築性の高い寓話であり、おそらくはゴア・ヴァービンスキーの最高傑作である。立体感にあふれて無限の厚みを備えた映像は3Dといったギミックをまったく必要としていない。ほとんど実写と見紛うほどの表現はCGによる映像としては稀有のものであろう。カメレオンに扮したジョニー・デップはここのところで最高の仕事を残し、ネッド・ビーティはあのロッツォに続いて恐るべき悪役をこなし、ビル・ナイはあの声で巨大なヘビとなって登場し、ハリー・ディーン・スタントンは特徴のある鼻をそのままに凶悪なネズミとなって現われ、バンジョーで変奏された『ワルキューレ』に乗ってコウモリの大群が空を覆う。ハンス・ジマーの悪乗りぶりがかなりすごい。これは美しい映画である。 


Tetsuya Sato