2011年10月8日土曜日

ちょっと変わった映画を集めてみました

キングスパイダー(2004)
Creepies
監督・撮影・編集:ジェフ・リロイ
アメリカ陸軍の兵器開発センターから軍用に開発された毒グモの群れが逃げ出し、いったい何が起こったのか、いったん地下へ姿を消すと一匹の巨大なクモとなって現われる。そこで毒グモの開発の任にあった少佐は部下とともにロケットランチャーを備えた怪戦車(としか言ってみようがない、とてもいいかげんなミニチュア)に乗り込み、ハリウッドの町でクモと戦う。「少佐、このままでは民間人に犠牲者が」「かまわん、どうせハリウッドだ。裏の人脈で動く腐った町だ、発射、発射」ということでチャイニーズ・シアター、キャピタル・レコード、ハリウッド・ボウルなどに悪意を込めて砲撃を加え、町を火の海に変え、さらに「わはは」などと笑いながらハリウッドの大看板も破壊して遂にクモをやっつける。一方、兵器開発センターでは毒クモを入れた容器一個が紛失し、行方知れずとなっていたが、それは場末の録音スタジオに誤って届けられ、壊れた容器から這いだしたクモの群れが録音技師や素人バンドに襲いかかる。で、襲いかかるクモの頭目がなぜか『アウターリミッツ』のザンティ星人そっくりで、諸君、人類とへたくそな音楽を滅ぼすのだ、などと仲間に演説したりするのである。
事実上の自主製作映画で、前半は巨大怪獣もの、後半はスプラッター系モンスターものになっていて、一本が二本でお得でしょ、というような内容になっていて、「特撮」はいまどきちょっとお目にかかれないような手作りであった。クモはメカニカルだったり、吊っていたり、CGだったり、リアプロジェクション・スクリーンを這い回る切り絵だったりといろいろだが、どれをとってもみな安いし、クモに破壊される高速道路はプラ板一枚貼っただけだし、ビルは段ボールのように見えるし、ビルの窓にはアルミ箔が貼ってあるし、兵器はいいかげんだし、ヘリコプターの飛行シーンは見えないところを指でつまんで動かしているし、怪戦車内部のセットとヘリコプター内部のセットは角度を変えて共用されている。そして軍隊は同時に3人以上登場しないし、誰もコンバットブーツを履いていないし(だったら足をアップにするな)、迷彩服もたぶん自前で調達して勝手に着ているだけだし、ミニチュアに多くを頼っているのでステーション・ワゴンよりも大きな車両は登場しない(一度だけ、救急車がそれらしいショットで出てきたけれど、あれはゲリラ撮影だと思うな。きっとドキドキしたんだろうな)。どこかの大学祭で上映されたら、たぶん大評判になったことであろう。似たような内容のプロ作品に比べるとよほどに頭を使った痕跡があり、その点での頑張りは認めるが、素面ではなかなか見れない種類の作品である。 
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キングスパイダーVSメカデストラクター(2005)
Creepies 2
監督:ジェフ・リロイ
『キングスパイダー』の続編。ロサンゼルス壊滅の原因となったクモが今度はラスベガスに出現するのでエリア51がクモ撲滅のために出撃し、前作と同様、確信を持ってラスベガスを火の海にする。殺虫剤で済みそうなところに戦闘機、プラズマ砲戦車、巨大ロボットなどで出かけていくのである。前半はおおむね都市破壊型、後半では少人数が籠城という構成は前作とほぼ同じだが、まるで二本の映画のようだった前作に比べるとバランスはだいぶ改善されている。で、いったい何があったのか、予算面でもいくらかの改善があった模様で、その証拠にラスベガスで半日くらいロケをしているし、特撮ステージがいくらか広くなったのか、ちょっとゆったりとした感じがするし、ミニチュアもサイズが少し大きくなったようだし、なによりも合成ができるようになっている。加えてパイロテクニックも向上して火薬にあわせてガソリンを使えるようになったようだし、照明のむらもなくなった。兵士たちの衣装がばらばらなのは相変わらずだが、靴をあまり写さないようにしているのは賢くなった証拠であろう。もし三作目があるのなら、ヘルメットもできるだけ写さないようにしたほうがよいと思う。別に意地悪を言っているのではない。素人映画だと言っているのである。 
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スターレック 皇帝の侵略(2005)
Star Wreck: In the Pirkinning
監督:ティモ・ヴォレンソラ
フィンランド製のビデオオリジナル作品で、ほぼ全編『スタートレック』(どちらか言うと『ネクスト・ジェネレーション』)のパロディになっている。で、ピッカード、というよりは「カーク艦長」みたいなやつと「クリンゴン」みたいなやつと「データ」みたいなやつが、どうやら「ボーグ」みたいなものとの戦っているうちに現代の地球へ現われ、場末でうらぶれた生活をしながら自分たちの世界へ帰ろうとしている。予定どおりならば、とがった耳をした「バルカン人」みたいなやつが人類とコンタクトして地球に繁栄をもたらしているはずが、その「バルカン人」みたいなやつは飲兵衛な上にどこかのロック歌手と意気投合して自分の仕事を投げ出したため、帰還の計画も思うようには進まない。三人組は「バルカン人」みたいなやつが自分の宇宙船をロシア人に売り飛ばしたことを知るとロシアを訪れ、まず宇宙船を確保すると大統領と契約を交わしてロシア人を訓練し、未来のテクノロジーを利用してまるっきり 『スタートレック』な ロシア製宇宙艦隊を作り上げ、その戦闘能力を悪用して地球を征服、「カーク艦長」みたいなやつは皇帝を名乗ってロシアの大統領を始末すると全地球の支配者になるが、人望がまったく得られないので飢えた人民の反乱にあい、地球を嫌うと艦隊を率いて宇宙へ飛び出す。そして宇宙で見つけた得体の知れない穴をくぐって反対側へ到着すると、そこが実は並行世界で、いきなり現われたこの侵略者に対し、地球の艦隊が反撃してくる。大戦闘の末に皇帝の艦隊が勝利を収め、敵の巨大な宇宙ステーション(格納庫の壁にはマクドナルドの看板の隣にちゃんとノキアの看板が)に乗り込んでいって、みんなで呑めや歌えの大騒ぎをはじめ、酔いつぶれたり、トイレでげろを吐いたりしていると、そこへ地球艦隊の援軍がやってくるので、また大戦闘になり、ドジを踏んだり、ごちゃごちゃと策を弄したりしているうちにどうにか勝利するものの、皇帝の艦隊も事実上、全滅、船は墜落し、気がついてみると、また最初の三人だけになって、氷原でわびしく焚き火にあたっている。
登場人物のほとんどがだらしのないのんだくれで、いちおう主人公の「カーク艦長」みたいなやつは虚勢を張ることとずるをすること、あと下半身の欲望をどうにかすることしか考えていない。思いつきはまったく悪くないものの、演出も出演者の演技も素人の域を出ておらず、そこへフィンランド的な、と言うべきなのか、そう言ったら失礼、と考えるべきなのか、重苦しい野暮ったさが追い討ちをかけるので、つまり、とても素人臭くてとても野暮ったい代物になっている。そうした素人臭さや野暮ったさにつきあうのは少々つらいものの、宇宙空間の戦闘場面など、特殊効果は意外なほどの仕上がりで、敵味方双方数十隻が入り乱れて戦い、光子魚雷を乱射し、派手に爆発する。下手は下手だが、とにかくやる気は立派なものだと思うのである。 
ちなみにこの映画を作った連中は2011年現在、第二次大戦末期にナチがロケットで月へ脱出し、そこに基地を作って円盤兵器を建造し、それで地球に攻め込んでくるという映画『Iron Sky』を準備している。http://www.ironsky.net/
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スター・トゥルーパーズ(2006)
El Baron contra los Demonios
監督:リカルド・リベレス
なんだかよくわからないけれど地球は何か悪いものに占領され、人工衛星に逃れた人類はエイリアンに手助けされて生き延びているようなのである。エイリアンに手助けされているといっても卑屈な態度で助けてもらっているわけではなくて、あきらかに顎で使っているし、おまえたちには人間の心がわからない、などと当たり前のようなことを言っている。ところがなぜか衛星の告解司祭はエイリアンだったりするのである。で、悪に占領された地球ではラグナロクが自らの子をはらむために男と言わず女と言わず陵辱の限りを尽くしていて、ラグナロクを倒すためにキリスト教徒の英雄バロンが立ち向かうものの、あっという間に敵の捕虜となってしまう。そしてラグナロクの保護者であり、ラグナロクにはらませるためにかれこれ九ヶ月も邪淫を断っているというレディ・パバータムに強姦され、強姦されても英雄なので肉体は汚されても魂はどうのこうのと御託を言い、一方、レディ・パバータムはバロンの精子を左手ですくってラグナロクに与え、ラグナロクはそれではらみ、怪物の誕生を恐れた人類はレディ・パバータムの隠れ家に核攻撃をくわえようとするが、それに先立ってバロンを救うために多淫症の女戦士で仲間の葬式にも出ないことから評判の悪いアイラ・ボウマン中尉が送り込まれ、ボウマン中尉はバロンの救出に成功するが、多淫症であったことからバロンをあからさまに誘惑し、先を急ぐバロンによって溶岩の流れに叩き込まれる。レディ・パバータムはラグナロクとともに荒野に逃れ、バロンがそれを追い、同じ頃、人類の軍勢は悪の軍勢と雌雄を決するために集結していたが、空中に現われたサタンの幻影に脅かされてもろくも破れ、ラグナロクは怪物を生み、その怪物をバロンが倒し、この間、この爆弾を落とすんですかどうするんですか、ということで妙な形の飛行機が爆弾投下口に核爆弾をぶら下げてうろうろと空をさまよっている、というような内容のとてつもなく低予算なスペイン製のSF映画である。女性の衣装は全部ハイレグ、エイリアンや怪物の多くはパペットで、部分的にストップモーションアニメやCG、メカニカルが使われている。バロンがもっぱら戦う相手は悪の手先の人形どもで、いかにも作り物のゴムマスクをかぶった連中が十人ばかりで現われて端から首を落とされる。人間が生きたままで食われるし、死体も食われるし、食われた上に串刺しにされるが、そういうシーンは単純なメカニカルを内装したミニチュアを使って撮影されている。寝ぼけた子供の落書きのような世界だが、鋲打ちの見えるメカとか、その発進プロセスをいちおうやってみせるとか、こだわりが見えるところがなくもない。 
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ミュータント・クロニクルズ(2008)
Mutant Chronicles
監督:サイモン・ハンター
宇宙から飛来した機械が人間をミュータントに改造し、このミュータントの大群が文明世界を崩壊させるので、そこに現われた英雄が機械とミュータントとを地中深くに沈んだ都市に封印する。それから500年ほどがたった28世紀初頭、世界はミシマ、バウハウス、キャピトル、インペリアルの4つの企業によって分割支配され、残り少ない資源を我が物とするために企業は戦争を繰り返していたが、その戦場で放たれた一発の砲弾が500年前の封印を破壊してミュータントが地上にあふれて地球は壊滅の危機を迎え、500年前の英雄が書き残した記録を保管している修道院の院長が兵士をつのってミュータントと戦う。修道院の院長がロン・パールマン、企業側のお偉方の一人がジョン・マルコヴィッチで、どちらもあきらかにやる気がない仕事ぶりで、まわりの無名のひとたちのほうがよほどに演技らしい演技をしていたような気がする。あと、『ディセント』のヒロイン、シャウナ・マクドナルドが戦争未亡人で登場する。映画の出来としてはかなりお寒いものではあるものの、アナログなコンセプトデザインが面白い。未来都市の造形がほとんどスターリン様式で、前線の兵士たちは第一次世界大戦とほぼ同じ装備で塹壕で雨に降られていて、敵陣からは変な形の兵員輸送車が進んでくるし、むやみとでかい巨砲で撃ち合いをするし、戦闘は白兵戦になるし、しかも航空機は蒸気機関で飛んでいる。蒸気機関で飛ぶので巨大な割にはほとんどがボイラーという感じの造形で、それが垂直で離着陸をする。このあたりの描写にかなりの力が入っていて、まず釜炊きがボイラーに石炭をくべるところから始まって、士官が蒸気圧を調べてエンジンを動かすとシリンダーが車輪をまわし、それでなぜ飛ぶのかわからないけれど、なにやら蒸気のようなものを大量に噴き出して飛び上がり、操縦系は転轍機と変わらないので、何かと言うととにかく渾身の力でレバーを動かし、急降下でもしようものならボイラー室の釜の蓋が開いて炎がこぼれ、石炭が客室にまで飛び込んでくるのである。脚本がフィリップ・アイズナー(『イベント・ホライズン』)、と聞くと、そういうものか、と納得しないでもない。いささか安普請ではあるものの、ミニチュアや美術はとにかく頑張っていた
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Tetsuya Sato