2012年8月3日金曜日

マダガスカル

マダガスカル
Madagascar
2005年 アメリカ 86分
監督:エリック・ダーネル、トム・マクグラス


セントラルパークの動物園でセレブのような暮らしを送っていて、自分はニューヨーカーであるとはっきり自覚しているライオンがいる。ところが友達のシマウマがある日、野生の王国を求めてなぜかコネティカットへ旅立とうと考えて動物園から逃げ出してしまうので、仲間のカバとキリンと追いかけるのである。グランドセントラル駅でどうにかシマウマに追いつくものの、そのときには警官隊に包囲されていて、麻酔銃で撃たれてすっかりトリップしているうちに動物愛護団体が「自由を求める動物たちを野生の王国へ」というような圧力を加えた結果、シマウマ、カバ、キリンと一緒に箱詰めされて貨物船に搭載され、どこかの野生の王国へ送られることになる。ところがこの貨物船は同様に自由を求めるペンギンの一味によってハイジャックされ、乱暴な操船で船から転げ落ちた箱は波に運ばれてマダガスカルとおぼしきどこかの野生の王国へたどり着く。そこではキツネザルの群れがレゲエな感じで踊りながら暮らしていて、肉食獣フォッサの襲撃に脅えていて、そのフォッサがライオンを見て脅えたのを見たキツネザルの王様はニューヨークからやってきたこの見慣れぬケモノを利用しようと思い立つ。
悪意に満ちたパロディが楽しい。
すでに冒頭から『野生のエルザ』がかなり意地悪く引用されているし、飢えたライオンのアレックスがフィレ肉を夢に見る場面は『アメリカン・ビューティー』の主人公レスター・バーナムの夢のシーンがそのまんまパクられている。動物たちのキャラクターはよく考慮されており、もちろんピクサーに比べればことさらなオーバーアクションが目立つという指摘も不可能ではないものの、『シャーク・テイル』と同様、無反省でどたばたとした作り自体が売りなので、それは作品の瑕疵にはなっていない。なかでも目的のためには手段を選ばない非情なペンギンたちが、非情であるにもかかわらず動くところはまるでペンギン、というところがすばらしかった(グランドセントラル駅に登場する人間のおばあちゃんも凶暴無比で悪くない)。ジャングルの容赦ない弱肉強食ぶりもなかなかによくできていて、特に序盤、フォッサの群れが小さなキツネザルをつかまえて、サラダボールに青物と一緒に放り込んでクルトンか何かをまぶして大きなスプーンとフォークでゆっさゆっさと和える場面はかわいらしくて本当に楽しい。シンプルではあるが、中身の詰まった作品である。




Tetsuya Sato