2012年8月20日月曜日

原爆下のアメリカ

原爆下のアメリカ
Invasion USA
1952年 アメリカ 74分
監督:アルフレッド・E・グリーン

ニューヨークのとあるバーで数人の男女が飲んでいるとテレビが国際関係の緊張を伝え、そこへ現れたテレビのリポーターが客の一人ひとりに徴兵制や軍備増強についてのインタビューを始めるので、客の一人ひとりがそれぞれの見地から国家権力の強大化に対する懸念を語り、そうしていると隅にいた一人の男が戦争で勝利を得るためには集中こそが肝要であると主張してブランデーグラスをゆすり、グラスのなかの揺れる液体をながめているうちにテレビはアメリカに対する侵略がおこなわれたことを伝え、アラスカが占領され、各地に原爆が投下され、全面戦争になったところで我に返り、グラスのなかの揺れる液体を見つめているうちに催眠術にかかっていたことに気がついて、間近に迫る未来を体験したバーの客たちは自分の姿勢を反省して国家への献身を誓う、という低予算映画で、ダイアログなどにはそれなりに頭を使った痕跡があるものの、つまるところいかがわしい団体がガリ版で作った政治パンフレットみたいなしろものである。
ロシア軍の作戦会議とおぼしき場面が何度か登場するが、将校たちがなぜかドイツ軍の制服を着ているのはそれしか手に入らなかったからであろう。そして侵略者たちはアメリカ軍の制服を着ているという説明が何度か入るが、それは戦闘場面がおもに第二次大戦中の記録映像からの使いまわしだからである。
記録映像のつなぎ方もめちゃくちゃで、いまシューティングスターが飛び立ったと思うと次の瞬間にはセーバーに変わっているし、そのセーバーの編隊が空中で戦う相手がシューティングスターだったりするし、B-36の編隊も次のカットではB-29に変わっているし、そのB-29が被弾するとB-17になったりする。視覚的に一貫性を与えようという意図がまったくないところでなにやら主張を試みているわけで、そういうありさまで無謀にもワシントンDC占領までやろうというのだからずうずうしい。




Tetsuya Sato