2013年4月22日月曜日

ジンギスカン

ジンギスカン
Genghis Khan
1965年 イギリス/西ドイツ/ユーゴスラビア/アメリカ 124分
監督:ヘンリー・レヴィン

メルキト族を率いるジャムカはエスゲイの部族を襲撃し、エスゲイを四つ裂きにして殺した上に、その子テムジンに巨大な首かせをはめて奴隷にする。テムジンは首かせをはめた状態で成年に達し、ふとしたことから自由を得ると仲間を集めて族長となり、ジャムカがすでに自分の妻と見なしていたボルテをさらってきて妻とする。そこでジャムカはボルテをさらって自分の天幕に連れ込むが、テムジンは一族とともにメルキト族に襲撃を加え、ボルテを救出したあとは報復を恐れて東を目指し、そこで中国の高官カム・リンと出会って中国の皇帝に迎え入れられる。その待遇は事実上の捕虜であったが、満州族が中国辺境を侵すと軍を預かって出撃し、蛮族を撃退した上にジャムカまでを捕えて戻ると皇帝からジンギスカンの名を与えられる。ところでテムジンの心は最初からモンゴル民族の統一にあり、ジャムカを殺さずにしておいたのもメルキト族との共同を考えてのことであったが、ジャムカは同盟を拒んでテムジンの手を逃れ、テムジンもまた中国の皇帝を殺害してモンゴルへ脱出、いきなり世界征服の大事業にとりかかり、ホラズムの王とともに反撃に出てきたジャムカを一騎打ちで倒したあとは、戦いで得た傷によって命を落とす。
あいにくとモンゴル史はまるで知らないけれど、たぶん内容はうそ八百。ジャムカ(劇中ではジャムーガ)はメルキト族ではなかったような気がするし、妻ボルテ(劇中ではボルテイ)がまさか金髪碧眼の美女だったということもないであろう。テムジンが変な髪形をしたオマー・シャリフ、宿敵ジャムカは例によってスティーブン・ボイド、テムジンの仲間になるのがテリー・サヴァラス、インド帰りの中国高官がジェームズ・メイスンで、これが常に東洋的な薄笑いを浮かべていて、しかも出っ歯なのである。万里の長城は絵で書いてあって、その先もいったいどこの中国なんだ? という感じで、北京の都というのが書き割りのチャイナタウンか立ち腐れのテーマパークかといういかがわしさで、風俗は寄せ集めてきたような清朝風。満州族が攻めてきても慌てなかったのはそのためであろう。皇帝はイギリスの名脇役ロバート・モーレーで、これは付け爪をつけていた。とどめにホラズムの王の役でイーライ・ウォラックが嬉しそうに登場し、これもなんだか怪しい格好をしていたのである。全編、学芸会、想像力と数百円(製作費が)という感じの安っぽさで、そこへ二流監督ヘンリー・ラヴィンの力の抜けた演出がなんとも言えない味わいを与えている。正真正銘の駄作だが、その駄作ぶりが笑えるところはこの映画の取り柄であろう。ロケはおそらくユーゴスラビア(当時)で、そのためであろう、馬は豊富に登場する。



ジンギスカン [VHS]
Tetsuya Sato