2012年6月11日月曜日

ベルヴィル・ランデヴー

ベルヴィル・ランデヴー(2002)
Les Triplettes De Belleville
監督・脚本・絵コンテ:シルヴァン・ショメ 


おばあちゃんの孫のシャンピオンは小さい頃から自転車に夢中で、成長するとおばあちゃんの伴走で練習に励み、やがてツール・ド・フランスに出場する。ところがそこへ現われたフレンチ・マフィアの一味がシャンピオンをさらっていくので、おばあちゃんとブルーノ(犬)はマフィアの後を追って足漕ぎボートに乗り込み、嵐に揺れる大海原を横切ってベルヴィルの町へやってくる。そこではマフィアがツール・ド・フランスの選手を賭博に使い、手がかりを見失ったおばあちゃんはスイングする三人の老女とめぐりあう。
実にていねいに、よくデザインされたアニメーションである。色彩は場面によってモノトーンからパステルへと移り変わり、線はやや太めのペン画のそれに近い。強調された遠近法のなかでのひとや物の動きは奥行きがあり、躍動感にあふれている。そして台詞は大胆に排除され、もっぱら絵の雄弁さによってストーリーが伝えられる。話はきわめてシンプルな「おばあちゃんによる救出」劇だが、細部はちょっと悪趣味で、その悪趣味がまたしつこくて、そういうフランス的な野暮ったいえぐみが笑わせてくれる(というわけで子供にはあまり見せたくない)。そしてマフィアに挑むばあさんたちは無類に強く、思い出したように画面に映し出されるブルーノ(犬)の夢は悪意に満ちてふてぶてしい。黙々と展開する生活描写が面白く、クライマックスのアクションシーンは滅多にないような見物である。





Tetsuya Sato