2012年6月5日火曜日

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史』

ロバート・ビッカーズ『上海租界興亡史』(訳:本野英一、昭和堂)


上海の公共租界で警官をしていた英国人リチャード・モーリス・ティンクラー(1898-1939)の生涯を中心に、いわゆる大英帝国の各地へ本国から出かけていって、そこで下働きをしていた英国人下層移民の社会に光をあてようという試みで、当事者の動機づけ、現地でのカルチャーショック、移民の社会構成などについて豊富な言及があり、それなりに興味深い内容ではあるものの、著者の目論見は歴史的な視点を保持することよりも歴史的な状況に感情移入することにあったようで、文献としては二流以下の仕上がりになっている。このオナニー野郎、というのが正直な感想である。とはいえ印象の悪さのおそらく半分以上はほとんど日本語の体をなしていない(そしてその割には自信満々な)訳文にあるので、多少の保留は必要かもしれない。




Tetsuya Sato