2012年4月24日火曜日

シッピング・ニュース

シッピング・ニュース
The Shipping News
2001年 アメリカ 111分
監督:ラッセ・ハルストレム


生きることに不器用で、そのせいで傷ついて壊れてしまった男が叔母に連れられてニューヨーク郊外の町を離れ、一族の故郷を訪れる。そこは5月でも雪がしっかり積もっていて夏は来たと思ったら終わってしまう、冬が来れば町との交通は自然に絶たれ、住人がアザラシのパイを食べているニューファンドランドなのであった。ほんとにもう、海がなければほとんどサウスパークのような田舎くさい場所で、住民は愚かで、呪われていて、それでも黙々と生きていて、過去は忘れて未来のためにと言いながら、愚行の拡大再生産は続いているので明日は昨日と変わることがない。それでも呪いが解けることはあるし、眺望が開けることもあるので、ひとはやがて癒される、という救いのあるのかないのかわからないような話で、それをオールスター・キャストで実に丁寧に映像化している。
ケヴィン・スペイシーの壊れた男は予想どおりだが、ジュリアン・ムーアの曰くつきの寡婦というのが予想外によかったし、ケイト・ブランシェットの死んだ女房というのも悪女全開でよろしかった。スコット・グレンの漁師兼新聞社主はいかにもという感じの役作りだし、上司のつまらない悪役にはあの独特な風貌のピート・ポスルスウェイトが配置されていて、これもいい味を出していた。少しコミカルで淡々とした人間ドラマだが、テンポがいい。吹雪の中を移動していく家、海賊の襲撃、人死にが出ればけっこうスプラッターと、見せ場の多い映画でもある。 






Tetsuya Sato