2012年4月20日金曜日

闇の列車、光の旅

闇の列車、光の旅
Sin nombre
2009年 メキシコ/アメリカ 96分
監督・脚本:ケイリー・ジョージ・フクナガ


ホンジュラスに住むサイラは父と叔父とともに北を目指し、徒歩でグアテマラに入って川を渡ってメキシコへ進み、多くの移民とともに駅で待機の時間を過ごし、やがて貨物列車が現われると先を争って屋根にあがり、雨が降ればシートをかぶり、そうしてさらに北を目指して進んでいくとメキシコ人のギャング三人があらわれてうずくまる移民から金品を奪い、サルマ・ハエック似のサイラはあやうく暴行を受けそうになるが、暴行を試みたギャングを別のギャングが切り殺し、仲間を裏切ったこのギャングはウィリーと名乗って列車に残り、サイラはウィリーに関心を抱き、一方ギャングは知らせを受けてウィリーを殺すための刺客を放ち、あるいは列車の進行方向で待ち伏せをしかけ、サイラは列車から逃れたウィリーを追い、ウィリーはサイラを家族と再会させるために北を目指し、やがて二人はメキシコ・アメリカ国境に到着する。
北上する不法移民の群れにしても、ギャングの異様な生態にしても、丹念な描写に恐れ入った。こちらの現実感から離れたところで展開する徹底したリアリズムは恐るべき日常性をまとい、ほとんどファンタスティックですらある。説明とダイアログは抑制され、その一方で絵がきわめて雄弁で美しい。明確な方向性によって完成された作品である。 






Tetsuya Sato