2012年4月7日土曜日

偉大な生涯の物語

偉大な生涯の物語
The Greatest Story Ever Told
1965年 アメリカ 199分
監督:ジョージ・スティーブンス

イエスの誕生から処刑、復活までを描く。マックス・フォン・シドーが演じる微妙に年齢不詳なイエスはカリスマを備えて造形的によくこなれており、さすがによい役者であると感心させられる。洗礼者ヨハネのチャールトン・ヘストンも威厳があって悪くないし、テリー・サバラスのピラト、クロード・レインズのヘロデ王もいい味を出していた。映画は歴史的なスペクタクルよりもイエスによる奇跡の再現に時間をかけ、カペルナウムにおける最初の説教、ラザロの復活の場面は見ごたえがある。セットは全体に演劇的に構築されていて、演出の主要な意図はそれを背景に一種の活人画を生み出すことにあるように見え、それはそれなりに成功しているものの、活人画から一歩離れて周囲の人間が動き出すとひどく安っぽくなるのは感心しないし、受難以降のハレルヤ・コーラスの流しっぱなしもよろしくない。特にクライマックスの処刑の場面からは演出が安いところへ流れていって、イエスが十字架をかついで進んでいくと、それを助けるために現われるのがいきなりシドニー・ポワチエだったり、イエスが十字架にかけられると「まことにこの方が神の子であった」とつぶやく百人隊長がいきなりジョン・ウェインだったり、という唐突さは感動よりも笑いを呼ぶ。昇天の場面に至っては土産物屋の絵葉書のような安っぽさで、作り手の想像力を疑いたくなる。 



Tetsuya Sato