2012年4月22日日曜日

裏切りのサーカス

裏切りのサーカス
Tinker Tailor Soldier Spy
2011年 フランス/イギリス/ドイツ 128分
監督:トーマス・アルフレッドソン


英国の諜報機関サーカスの指揮者コントロールはサーカスの内部にひそむ二重スパイ「もぐら」をあぶり出すためにジム・プリドーをハンガリーに送るが、KGBの勇み足でジム・プリドーは生死不明となり、コントロールは責任を取ってサーカスを去り、コントロールの右腕であったスマイリーもまたサーカスから離れるが、政府筋からの極秘指令によってスマイリーは「もぐら」の正体を調べることになり、サーカスの周辺から証言を集め、サーカスの内部から資料を集め、アメリカの諜報機関との提携を急ぐサーカスがソ連をはめているつもりでソ連にはめられていることをつきとめ、「もぐら」の正体を暴き出す。
原作は未読(というか、白状するとル・カレは読んだことがない)。一見したところ際立ったところが何もない映画だが、緊密な構成とにおい立つばかりに再現された70年代初頭の世界、状況がもたらす緊張感、俳優陣の忍耐強い演技によって際立った映画になっている。スマイリー役のゲイリー・オールドマンがとにかく渋い。コリン・ファースは不安定な役どころを見事にこなし、マーク・ストロングは非情な世界を手際よく圧縮し、ベネディクト・カンバーバッチは髪を染めて70年代になりきっている。そしてジョン・ハートが実にすばらしい。これは俳優の演技を確認するためだけでも何度も見たい作品であり、俳優の演技を確実に拾い上げている演出の確かさは賞賛に値する。 


Tetsuya Sato