2012年12月16日日曜日

ホビット 思いがけない冒険

ホビット 思いがけない冒険
The Hobbit: An Unexpected Journey
2012年 アメリカ/ニュージーランド 170分
監督:ピーター・ジャクスン

ドラゴンのスマウグがはなれ山に現われてドワーフの王国を襲い、それ以来ドワーフは流浪の民となるが、祖国の奪還をもくろむ13人がガンダルフの助けを得てビルボ・バギンズの家に集まり、ビルボ・バギンズもまたガンダルフから「忍びの者」として仲間に加わるように誘われ、一度は断るもののドワーフたちの歌声を聞いてその気になり、ガンダルフに13人のドワーフ、ビルボ・バギンズを加えた旅の仲間が中つ国を進んでいくとドワーフのリーダー、トーリン・オーケンシールドに恨みを抱くオークに襲われ、オークから逃れながらガンダルフに誘導されて裂け谷に着き、そこでエルフのエルロンド卿の歓迎を受け、エルロンド卿の知恵によってはなれ山に近づくための手がかりを得るが、一行のもくろみはそこに現われたサルマンの反対にあい、旅の仲間はガンダルフが時間を稼いでいるあいだにエルフの里を抜け出して山を越え、野営をしているうちにゴブリンに捕まり、仲間からはぐれたビルボ・バギンズは地底のそこでゴラムと出会い、ゴラムが落とした指輪をポケットに入れ、ゴブリンに捕えられたドワーフたちがガンダルフの助けで脱出する一方、ビルボ・バギンズは指輪の力で姿を隠してゴラムから逃れ、旅の仲間が集まったところへオークの群れが襲いかかる。 
映画的な意味での時間的、空間的構成はほぼ完全に排除され、はっきり言ってめりもはりもないところで淡々と物語だけが進行していく、という作り方は『ロード・オブ・ザ・リング』よりも徹底していて、察するにトールキンが好きな人々にとってはこれ以上はないくらいの体験になっているのではないかと推察するが、トールキンが退屈な人間にとってはトールキンと同様に退屈である。加えて決定的に決裂している善悪というのはどうにも見ていて相性が悪くて、終盤ゴブリンがばったばったと切り倒されたりワーグの群れがワシの群れに放り出されたり、という場面を見ていると、そろそろ和解したらどうか、という気持ちになる。物語的な紆余曲折とも相性が悪いので、ビルボ・バギンズがゴラムに剣を突きつける場面では、あとで面倒になる前にやっちまえ、というようなことを考えている。美術面は例によって水準が高いし、お金のかかった絵は見ごたえがある。24fpsのハイ・フレーム・レートはきわめてクリアな映像を出現させているが、妙に正直すぎるせいか、テレビ映画のように見えなくもない。 

Tetsuya Sato