2015年11月30日月曜日

トポス(39) ヒュン、見てはならないものを見る。

(39)
 木に縛りつけて時間をかけて切り刻むと、売人の口が軽くなった。村のはずれの木のうろに注文書と金を入れておくと、夜のあいだに魔法玉に交換されるという。誰がそれをやっているのか、見たことはなかった。誰がやっているのか、見てはならないと言われていた。
「そういうことなら」とヒュンが言った。「俺がこの目で確かめてやる」
 売人から聞き出した木のうろに紙の束を押し込んで、藪に隠れて夜を待った。夜中を過ぎたころになって、白髪を乱した予言者が杖をついて現われた。一人ではなかった。二人でもなかった。あとからあとからやって来て、数十人で木を囲んだ。一人が木のうろに手を入れて紙の束を引っ張り出した。予言者たちが怒り始めた。杖をふりかざして怒りを叫ぶと、暗雲が、とか、雷が、とか、この声を聞けっといった声が切れぎれに聞こえた。クロエが立ち上がって突進した。腰だめに構えたショットガンで予言者たちに散弾を浴びせた。白髪を乱した予言者たちが次から次へと、白い衣を鮮血で染めて倒れていった。だが半分を片付けたところで弾が尽きた。生き残った予言者たちがこの声を聞けっと叫んで杖を振った。そのあいだにヒュンが背後にまわっていた。古い銃で数人をしとめ、弾がなくなると剣を抜いて予言者たちの背中を突いていった。倒れてうめいている者はキュンが羊飼いの杖を使ってとどめを刺した。生き残った者はいなかった。死体が山ほども転がったが、クロエの心は晴れなかった。

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