2015年11月17日火曜日

トポス(30) ヒュン、キロエと出会う。

(30)
 ヒュンとネロエはクロエの家で暮らし始めた。ネロエはヒュンのために食事を作り、ヒュンのために床を整え、ヒュンの服の洗濯をした。ヒュンはどこからか羽根飾りがついた帽子を見つけてきて、それをかぶって剣を腰に吊るして町へ出かけた。友達を作り、友達のおごりで酒を飲んだ。したたかに酔って家に帰ってネロエがいなくなっていることに気がついた。ネロエは手紙を残していた。
「邪悪な黒い力が世界の繁栄と平和を破壊しようとしています。邪悪な黒い力が恐怖と暴力によって人々を苦しめようとしています。わたしは自分にできることをしなければなりません。あなたがいつか、わたしの戦いに加わってくださることを祈りつつ。さようなら」
 ヒュンは酒瓶から酒をあおってネロエのために乾杯した。
「また会うこともあるだろうさ」
 ヒュンは町へ出かけて物陰にひそみ、チュンの家のひとの出入りに目を凝らした。その合間に広場を歩いて娘たちに声をかけた。その中にキロエという名の娘がいた。ヒュンが愛の言葉をささやくとキロエはたちまち恋に落ちた。キロエはチュンの家で働いていた。ヒュンはコロエに宛てた手紙を書いてキロエに託した。キロエは手紙を開いて中を読み、嫉妬の炎に包まれた。それでもキロエは預かった手紙をコロエに渡した。コロエはヒュンの姿を一目見ようとバルコニーに走り出た。ヒュンが手を振ると手すりにからだを預けて身を乗り出した。キロエがコロエの背後に忍び寄った。嫉妬の炎を目にともして、コロエのからだを突き飛ばした。

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