トポス(28) ヒュン、ネロエと出会う。

(28)

　テレポッドＡが音を立てて口を開けた。ロボットがヒュンをつかんでテレポッドＡに放り込んだ。所長が瓶の蓋を開けた。ハエが飛び出してきてポッドの中で羽音を立てた。ドアが閉じた。どこかで機械がうなり始めた。
「俺は運命を受け入れている」とヒュンが言った。「俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
「わたしにキスを」とハエが言った。
　ヒュンがハエにキスをした。するとハエはカエルになった。
「わたしにキスを」とカエルが言った。
　ヒュンがカエルにキスをした。するとカエルはハリネズミになった。
「わたしにキスを」とハリネズミが言った。
　ヒュンがハリネズミにキスをした。するとハリネズミは美しい娘に姿を変えた。
「わたしはネロエ」と娘が言った。「あなたのおかげで呪いを解くことができました。今度はわたしがあなたを助けます」
　ネロエがひざまずいて手を合わせた。小声で短く呪文のような言葉をつぶやいた。雨粒がヒュンの頭を叩き、稲妻がヒュンとネロエを照らし出した。二人はポッドの外にいた。ポッドの中には所長がいた。不格好なロボットもいた。ヒュンが叫んだ。
「おい、何が起きたんだ？」
「居場所を交換したのです」
　テレポッドＡが光を放ち、一瞬遅れてテレポッドＢが光を放った。転送が終わり、テレポッドが口を開けた。あふれ出す白煙を割って所長の顔が現われた。続いてからだが現われた。半分が人間、半分がロボットのような怪物が怒りの形相もあらわにして、ヒュンに向かって走り出した。ネロエが再びひざまずいて呪文のような言葉を唱え始めた。

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