2015年11月16日月曜日

トポス(29) 許さない、とクロエは叫ぶ。

(29)
 クロエはショットガンを構えていた。何かを撃とうとしていたわけではなかったが、何かを撃たなければならないような気がしてショットガンを構えていた。継母と二人の義姉を家から追い出し、刑務所の壁を爆破してトロールを殺戮したが、気持ちはまだ、どこかで収まっていなかった。それほどまでにクロエの怒りは深かった。気がつくと雨粒に顔を打たれていた。稲妻の光が怪物の群れと奇妙な機械を照らし出した。怪物が一頭、こちらに近づいてくる。半分が人間、半分がロボットのような怪物の醜くねじれた首の先に所長の顔が貼りついていた。口をゆがめて何かを叫んでいた。怪物がクロエの前で鉄の爪を振り上げた。
「許さない」とクロエが叫んだ。
 怪物に向かって続けざまに弾を浴びせた。怪物は痛みに身をよじり、夜の空に向かって咆哮を放った。クロエがショットガンの弾倉を開いた。父親の形見の魔法弾を腰の袋から取り出して、次から次へと押し込んでいった。
 クロエは魔法弾を怪物に浴びせた。一発撃つと凄まじい雷電がほとばしった。あるいは地獄の炎が渦を巻いた。命中すると凍りついて八方に氷柱を突き立てた。怪物たちが逃げ惑った。中にはひざまずいて命乞いをする者もいた。クロエは容赦なしに弾を浴びせた。怪物のからだが千切れ飛び、血まみれの死体の山ができあがった。それでもクロエの心は晴れなかった。

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