トポス(27) 雷鳴がとどろき、暗い空に稲妻が走る。

(27)

　雷鳴がとどろき、暗い空に稲妻が走った。雨粒が刑務所の中庭を叩いていた。ヒュンは泡立つ地面に投げ出された。ロボットが差し出す傘の下で、所長がヒュンを見下ろしていた。
　くくくくく、と所長が笑った。
「逃げ出した者には」と所長が言った。「罰として、科学の発展に協力してもらうことになっている」
　所長が指差した先には犬小屋ほどの大きさの円錐形の物体があった。
「テレポッドだ。そこに見えるテレポッドＡにおまえを入れる。そしておまえを科学の力で分解して、向こうに見えるテレポッドＢに転送する。安心しろ。危険はない」
　テレポッドＢのまわりでは、いくつもの暗い影がうごめいていた。稲妻の光がきらめいて、実験の犠牲者たちを照らし出した。
　半分が人間、半分がヤモリのような怪物が、半分が人間、半分がトカゲのような怪物が、半分が人間、半分がカエルのような怪物が、半分が人間、半分がバッタのような怪物が、半分が人間、半分がムカデのような怪物が、半分が人間、半分がトンボのような怪物が、半分が人間、半分がミミズのような怪物が、半分が人間、半分がキノコのような怪物が、半分が人間、半分がクラゲのような怪物が、半分が人間、半分がナマコのような怪物が、半分が人間、半分がイクラのような怪物が、半分が人間、半分がレタスのような怪物が、半分が人間、半分がバナナのような怪物が、影を重ね、足跡を重ね、暗い空に向かって咆哮を重ね、うつろな眼差しを地面に向けて、ポッドのまわりをさまよっていた。
「おまえはこれと一緒に転送する」
　所長がガラスの瓶を取り出した。瓶の中ではハエが羽音を立てていた
　くくくくく、と所長が笑った。
　くくくくく、とロボットが笑った。

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