2015年1月4日日曜日

Plan-B/ 幽鬼

S2-E11
幽鬼
 汚れたぼろ切れのかたまりのようなものが夜の空に浮かんでいた。風に舞って都市を見下ろし、風に吹かれて舞い降りて、連なる窓の一つに近づいていく。ぼろの下からゆがんだ顔が現われた。白濁した目の下で、乱杭歯が並んだ口を開けた。痩せこけた手を伸ばして窓に触れ、カーテンで隠されたなかの様子をうかがった。手にわずかな力を加えると、窓のガラスが砕け散った。カーテンを分けて、部屋へ押し入っていく。悲鳴が上がる。逃げ惑う音がする。悲鳴が無残に断ち切られる。あなたはそれを、隣の部屋で聞いている。

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