2015年1月15日木曜日

Plan-B/ 飽食

S2-E19
飽食
 悪魔の食欲には限りがない。地上に這い出た悪魔は羊の群れを残らず平らげ、逃げようとした牧羊犬と羊飼いを爪の先に引っかけて丸呑みにした。近くで草を食んでいた牛の群れも平らげた。囲いのなかにいた豚の群れも平らげた。途中で出会った人間たちは、大人も子供も、男も女も、片っ端から丸呑みにした。ただ、ひざまずいて恭順を誓った豚飼いだけは見逃した。悪魔は絶えず口を動かしながら町へ進んだ。町に着くと路上にいた人間たちを一抱えにして捕まえて、一人ずつつまんで呑んでいった。窓に手を突っ込んで、見つけた人間の手足を引きちぎった。屋根を剥がして捕まえて、足のほうからかじり始めた。一つの町が無人になると、次の町へ進んでいった。そしていくつかの町を平らげたあと、悪魔は荒れ果てた畑に膝を突いて吐き始めた。すっかり吐いて、出てきた場所に帰っていった。悪魔の食欲には限りがないが、それはいくらか病的なものだと言われている。

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