2012年7月15日日曜日

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
Extremely Loud & Incredibly Close
2011年 アメリカ 100分
監督:スティーヴン・ダルドリー


マンハッタンで宝石店を営むトーマス・シェルは息子のオスカーに対して、察するにある種の科学精神にもとづいて対等の関係を結び、オスカーは父親に対して非常に親密な感情を抱いていたが、9.11の同時多発テロで父親を失い、失ったことを受け入れることができないまま、一年後、父親のクローゼットで封筒に入った鍵を見つけ、この鍵の正体を確かめることにして封筒に記されていたブラックという名前だけを頼りにニューヨーク在住のブラック姓の人々の住所を調べ、各種サバイバル・グッズを入れたリュックを背負って訪問していく。
ジョナサン・サフラン・フォアのかなり込み入った原作は未読。父親がトム・ハンクス、母親がサンドラ・ブロック、オスカーの調査活動に途中から参加する老人がマックス・フォン・シドー、オスカーが住んでいるアパートのドアマンがジョン・グッドマン。
映画は9.11の前後とその一年後の二つの時間枠を自在に動き、アスペルガー症候群を抱えているようにも見える主人公オスカー・シェルの心象を緻密に描写していく。まず、ロケ中心の映像が非常に印象的で美しい。構成は確かで、忍耐強い語り口は見ていて心地よい。そしてオスカー役のトーマス・ホーンを含め、出演者はいずれも実によい演技をしていて、特にサンドラ・ブロックには驚かされた。マックス・フォン・シドーはさすがの貫録であり、出演シーンは短いものの、ジョン・グッドマンの使い方もなかなかにうまい。丹念に作られた立派な作品だと思う。






Tetsuya Sato