2012年7月14日土曜日

ゴモラ

ゴモラ
Gomorra
2008年 イタリア 135分
監督:マッテオ・ガローネ


母親が営む小さな雑貨屋で配達の仕事をしている少年はなんとはなしに、という感じで組織に足を踏み込んで麻薬を運び、砂漠の齧歯類のように見えなくもない若者二人はボスはいらないと主張して勝手なふるまいをするので袋にされ、それでも懲りずにあほうなことを繰り返し、組織から分離した連中は抗争をしかけ、組織で金の運び屋をしている男は荒れ果てた団地で金を配って歩きながら分離した連中の影におびえ、オートクチュールのコピーを量産する地下工場では仕立て屋が中国人の誘いを受けて組織を裏切り、職にあぶれた若者は産業廃棄物の不法投棄の仕事に拾われ、その現場では何も知らないアフリカ人や子供が使われている。 
ロベルト・サヴィアーノによるノンフィクション『死都ゴモラ』の映画化。原作は未読。ナポリに拠点を置いて地下経済を支配する犯罪組織カモッラのおもに末端における風景をドキュメンタリー調のスケッチでまとめている。実際にナポリでロケがおこなわれている模様だが、荒廃ぶりがすさまじい。『それでも生きる子供たちへ』のエピソード『チロ』に輪をかけたような状態で、巨大なプロジェクトが立ち腐れして、そこに人間が穴居人のように住み着いて、ほかにすることがないので犯罪に走っているのである。並行して走る複数のエピソードはいずれも丹念に作り込まれ、俳優もきわめてリアルな演技をしているが、語り口に文体が乏しく、やや単調に流れるところが惜しまれる。対象の違い、表現形式の違いはあるとしても、往年のイタリア社会派のようなパワーがない。 






Tetsuya Sato