2012年7月12日木曜日

シシリアン

シシリアン
The Sicilian
1987年 アメリカ 115分/140分
監督:マイケル・チミノ


1947年、シチリアの村モンテレプレでサルヴァトーレ・ジュリアーノは飢えた村人に配るために小麦を盗んで警察に追われ、馬に乗って逃れると警察に捕えられていた山賊の一味を解放して仲間に加え、土地のない農民に土地を買う金を与えるために軍の輸送列車を襲い、公爵の屋敷を襲って金品を奪い、さらに公爵を誘拐して身代金を要求し、そのように無法を働くサルヴァトーレ・ジュリアーノをマフィアのドン・マジーノは息子のようにいとおしんで保護を与えるが、ドン・マジーノの一派とは利害関係が一致しない共産主義者が無視できない勢力を獲得すると、ドン・マジーノはサルヴァトーレ・ジュリアーノと取り引きをして恩赦と引き換えに共産主義者を恫喝するように仕向け、ただ恫喝するはずが裏切り者のしわざによって虐殺が起こり、サルヴァトーレ・ジュリアーノは孤立し、サルヴァトーレ・ジュリアーノを始末するためにカラビニエリの部隊が送られる。 
劇場公開版はサルヴァトーレ・ジュリアーノの死体が放り出されるところから始まるが、DVDに収録されているバージョンは小麦泥棒の場面から始まっていて、オリジナルより30分ほど長い。
クリストファー・ランバートはなにやら熱演をしているし、ピショネッタ役のジョン・タトゥーロもなりきっているし、テレンス・スタンプの公爵ぶりはさすがの風格だが、『シシリーの黒い霧』と同じ素材を扱っているとは思えないほど、映画は空疎な紋切型をなぞり続ける。マフィアはどこからか切り取ってきたようにマフィアだし、サルヴァトーレ・ジュリアーノは山に入って山賊になると、当然のようにいつも本を手にしているのである。察するにプルタルコスを読んでいるのであろう。紋切型なら紋切型で、思い切って紋切型に圧縮すればそれなりのものになったはずだが、いや、いっそオペラ仕立てにでもしていればもっとましなものになったはずだが、なぜかおおまじめに言わばロマンに仕上げようともくろんでいて、紋切型は作り手の単なる鈍さとしてこちらの目に映ることになる。マイケル・チミノは妙なヒロイズムを振りかざすよりも、劣情と結託しやすい材料を扱ったほうがよい結果を出すのであろう。 






Tetsuya Sato