2012年1月31日火曜日

美しきエレーヌ

いわゆるトロイア戦争の原因になったパリスによるヘレネ誘惑を題材にしたオッフェンバックのオペレッタ(1864)。
第一幕:スパルタの王メネラオスが熟睡している隣でヘレネが倦怠を語り、羊飼いとのアバンチュールを夢見ているとパリスがのこのことやって来て預言者カルカスの手引きでヘレネに近寄る。起き上ったヘレネはパリスを前から横から後ろからと検分して舞い上がり、そこへガイドに率いられた観光客、アガメムノン、両アイアス、アキレウスのギリシア諸王がパジャマ姿で現れてパジャマパーティに毛の生えたような競技会の開始を宣言する。パリスはクイズと詩の創作で勝利して喝采を浴び、ここで初めてプリアモスの子であることを明かしてヘレネに晩餐に招かれるが、メネラオスの存在をうとましく感じたパリスは偽の預言でメネラオスをクレタへ送り、自分は早々と夫婦のベッドに横たわる。
第二幕:パリスは約束どおりにヘレネを訪ねるが、ヘレネは愛欲と貞節のはざまで揺れてパリスの求愛を退け、寝室の護衛を二倍にした上でカルカスに夢を求めて夢のなかでパリスを迎えようとするが、夢は夢ではなかったためにクレタから戻ったメネラオス(空港の免税店の袋をぶら下げている)に同衾しているところを発見される。激怒したメネラオスは隣の部屋にそろっていたギリシアの諸王に復讐を求めるが、予告なしに帰宅したおまえにも責任があるという方向へ話が流れ、流れたところで、だから責任はもっぱらメネラオスにあるということになり、ヘレネも尻馬に乗って夫をなじり、それはそれとしてパリスはスパルタから追放される。
第三幕:ヘレネとメネラオスの夫婦は気分を変えるために海辺のリゾートを訪れるが、夫が嫌味を言い続けるのでヘレネは怒り、アガメムノンはメネラオスのせいでギリシアが女神の不興を買ったことで不安を覚え、しかも海辺を見ればオレステスをはじめとする若い男女が怪しい踊りを踊っていたりするのでいよいよギリシアの将来が心配になり、自分も必要があればイフゲニアを犠牲にする覚悟があるのだから、と説得して全ギリシアのためにメネラオス一人が犠牲になることを要求する。そこへパリスがキュテラの預言者として現われて解決策を提案し、メネラオスの同意のもとにヘレネをさらって海へ逃れ、全員の希望どおりにメネラオス一人が犠牲になる。
パリ・シャトレ座の2000年の公演を録画で鑑賞。第一幕、第二幕ともにダブルベッドが舞台で中心的な役割を果たし、第三幕はいわゆるビーチなのでさすがにベッドはないな、と思っていたらパリスがベッドに乗って降臨した。メネラオスの寝取られ亭主ぶりがかなりすごい。


Tetsuya Sato