2011年12月24日土曜日

W.S.ヴァンダイク『桑港』(1936)

桑港(サンフランシスコ)(1936)
San Francisco
監督:W.S.ヴァンダイク
1906年のサンフランシスコを舞台にキャバレーのオーナーとオペラハウスのオーナーがひとりの歌姫に恋をして奪いあう。キャバレーのオーナーがクラーク・ゲイブル、その幼なじみの神父がスペンサー・トレイシー、歌姫がジャネット・マクドナルド。恋があり歌があり踊りがありオペラもあり、クラーク・ゲイブルはセミヌードを披露し、経験による老人の教えがあり神父による信仰の戒めがあり、大地震のスペクタクルもあり、最後にはやくざ者の回心もあるという見せ場の連続に徹底した娯楽映画である。特にクライマックスの大地震(記録によるとマグニチュード7.6)の迫力はいま見ても半端なものではなく、ビルは倒壊し、壊れた窓はピアノを吐きだし、地割れはひとを飲み込み、火災が町をなめ尽くす。特殊効果もがんばっているが、手前の描写のほうもきちっとしていて、がれきの山と化した町をさまよう人々の呆然とした様子、助けを求める人々の様子などがなかなかリアルで、そこへ余震が襲いかかり、時間とともに軍隊が出動し、町の外には避難民のキャンプもちゃんと出現する。災害映画としては第一級であろう。ヒロイン、ジャネット・マクドナルドに人生を語る元気なおばあさんのジェシー・ラルフがなんだかものすごくいい感じ。
桑港 [DVD] FRT-077

Tetsuya Sato