2011年12月6日火曜日

ジョン・フォード『アパッチ砦』(1948)

アパッチ砦(1948)
Fort Apache
監督:ジョン・フォード


ジョン・フォードの「騎兵隊」三部作の一作目。
合衆国陸軍のサーズデイ中佐はヨーロッパでの任務を解かれてアリゾナ準州にあるアパッチ砦に着任する。とはいえ電信の故障で着任の辞令が砦に届いていなかったために駅馬車で最寄りの駅に到着すれば出迎えはなく、砦に到着すれば将校たちはダンスパーティを開いている。砦に駐屯する連隊の指揮官に任命されたことをすでに左遷であると考えていた中佐にはこれが面白い筈もなく、加えてしゃちほこばったところがあって、現地の習慣を堕落と捉え、連隊が監視下に置くアパッチを最初から野蛮人の集団と決めつけている。そしてそのアパッチは政府監督官の悪辣さに怒って居留地を離れ、メキシコを目指して南下を始め、連隊のヨーク大尉はそれを交渉によって食い止めるが、大尉がアパッチと交わした約束をサーズデイ中佐は守ろうとしない。ということでアパッチの実力を過小評価した中佐は数倍の敵に連隊の全兵力を振り向けて、その結果として伝説になる。
頭の固いサーズデイ中佐がヘンリー・フォンダ、その下で賢明にふるまおうと試みるヨーク大尉がジョン・ウェイン、中佐の娘がシャーリー・テンプルである。アパッチ砦の駐屯部隊の将校たちはほとんどが降格の経験者で、下士官はなぜかアイルランド人まみれで、ヴィクター・マクラグレン扮する軍曹とその一味は例によって果てしなく酒を飲む。下士官を中心にした軍隊コメディぶりは文句なしにおかしいが、この映画の骨の太さは愚劣な指揮官に率いられた軍隊が壊滅する有様を淡々と最後まで描ききったところであろう。歴史の語れない部分を語ろうとするこの取り組みは知的であり、その冷静な成果は称賛に値する。ヘンリー・フォンダの演技が印象的であった。 
アパッチ砦 [DVD] FRT-082


Tetsuya Sato