2011年12月19日月曜日

ジョージ・ミラー『ハッピーフィート』(2006)

ハッピーフィート
Happy Feet
2006年 オーストラリア・アメリカ 108分
監督:ジョージ・ミラー

皇帝ペンギンの世界では心の歌が歌えないと一人前のペンギンとみなされないという決まりになっていたが、メンフィスとノーマ・ジーンのあいだに生まれたマンブルは生まれたときからステップを踏む習性があり、しかもまったく歌が歌えない。この点でマンブルはチャレンジされたペンギンとなり、仲間から離れたところをヒョウアザラシに追われてアデリーペンギンの営巣地にたどり着き、そこでラモンほかマンボな連中に受け入れられる。そしてマンブルは皇帝ペンギンの営巣地に戻ってダンスを伝えるものの、保守的な勢力によって追放されてしまうので、名誉を挽回するために最近魚が取れなくなった原因を明かそうと考え、禁断の地を目指して進んでいく。
ほとんどデフォルメされていないペンギンが歌って踊る姿は圧巻である。ペンギンの愛らしさはリアリティがもたらす愛らしさであり、同時に背景となる南極の環境もまたリアリティを備え、海は冷たい色に染まり、冬は暗く、ブリザードは壮絶で、捕食行動はしばしば残酷に見える。ただ歌って踊って楽しいフルCGアニメではない。後半へと進むにしたがって次第に現実の過酷さが顔を出し、その過酷さの背後にはわれわれ人類の影がちらつき、やがてその姿を見せるとそれはカモメが予告したように醜悪である。人間に結び付けられる荒廃と残忍、醜悪さと疎外感はかなりショッキングで、あまりの恐ろしさにわたしは泣いた。このあたりはエコロジカルなメッセージへと還元されるが、どちらかと言えば人間嫌いが先にあるような気がしないでもない。CGで表現されたペンギンの羽毛、氷や海の冷たさ、遠近感のある空気などは見ごたえがある。ジョージ・ミラーは半端な仕事はしていない。 
ハッピー フィート [DVD]

Tetsuya Sato