2011年12月22日木曜日

ラオール・ウォルシュ『彼奴は顔役だ!』(1939)

彼奴は顔役だ!(1939)
The Roaring Twenties
監督:ラオール・ウォルシュ


1918年4月の西部戦線で三人のアメリカ兵が砲弾が開けた穴のなかで出会い、戦後、禁酒法下のアメリカに復員して二十年代の狂騒を駆け抜けていく。原題どおり、咆哮する二十年代を背景にして、再就職先が見つからないという理由で善人で下戸のままギャングになってしまった男エディ・バートレットを中心に、友情あり、愛あり、抗争あり、陰謀あり、裏切りあり、大恐慌あり、とにかくやるべきことは全部やる、という勢いで、やや冷笑的なナレーションが主要な状況を要領よく説明し、映像は雄弁で、テンポが速く、ダイアログはシャープでよく切れる。ジェームズ・キャグニーがとにかくいいし、そこへ加わるハンフリー・ボガートの悪さがまたよろしい。西部戦線の場面で弁護士の卵のジェフリー・リンがライフルを構えて銃眼をにらみ、「あのドイツ兵、まだ十五歳くらいじゃないのかな」と言って構えたライフルを元に戻すと、ハンフリー・ボガートがすかさず射殺して、「もう十六にはなれねえ」と言ってにやっと笑う。そのくらい悪いのである。育ちの悪い女パナマ・スミスに扮したグラディス・ジョージがまたいい感じで、ジェームズ・キャグニー扮するエディ・バートレットに最後まで付き添ってかっこよく台詞を決めていた。
彼奴は顔役だ! 特別版 [DVD]

Tetsuya Sato