2011年12月13日火曜日

ジョン・フォード『捜索者』(1956)

捜索者(1956)
The Searchers
監督:ジョン・フォード


1868年のテキサス。南軍で戦ったイーサン・エドワーズは終戦から三年を経て帰郷し、弟一家に迎えられる。間もなくイーサンはテキサスレンジャーとともに牛泥棒を追って荒野に出るが、これはコマンチの戦闘部族が仕組んだ罠であった。コマンチはエドワーズの家を襲って弟夫婦とその息子を殺し、二人の娘を連れ去ってしまう。そこでイーサンはさらわれた姪を連れ戻すために荒野に進み、逃げ続けるコマンチを五年かけて追っていく。
インディアンに家族を奪われた男の復讐劇という形式になっているが、ジョン・フォードの視点は公平で、主人公イーサンは自己に拘泥して得体の知れない憎悪を抱き、そのために明らかに抑制を失っており、一方、騎兵隊はインディアンの虐殺をおこない、コマンチの側にも復讐の理由を与えている。絶望的なまでにかたくななイーサンをジョン・ウェインが好演しており、対する理性的な役どころはジェフリー・ハンターがインディアンの血が八分の一混じっているという設定のマーティンを演じてうまくバランスをとっている。とはいえ、このマーティン・ポウレイが理性的でいられるのも奪われた娘の奪回という範囲であって、五年間もほったらかしておいた恋人(ヴェラ・マイルズ)がとうとうしびれを切らしてほかの男と結婚しようとすると、もう矢も盾もたまらなくなって理性を失い、相手の男に飛びかかっていくのである。自分を賭けた殴り合いを花嫁衣装で陶然と眺めるヴェラ・マイルズの表情がよい。演出はテンポが速く、どの場面も要領よく短く手堅く固められ、ほどよくユーモアが配置されている。傑作である。 
捜索者 [DVD]


Tetsuya Sato