2011年12月3日土曜日

タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密

タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密
The Adventures of Tintin
監督:スティーヴン・スピルバーグ
タンタンが手に入れた帆船ユニコーン号の模型には謎が隠されていて、その謎を追う謎の男サッカリンがタンタンの前に現われ、タンタンはいきなりさらわれて貨物船に閉じ込められ、サッカリンに貨物船を奪われた船長のハドックとともに海へ逃れ、サッカリンの水上機を奪ってサッカリンの目的地へ先回りするが、サッカリンはすでに謎を手にする算段をととのえ、目論見どおりに謎を手にしたサッカリンをタンタンは追いかけ、取り逃がすものの、ふたたび先回りをしてサッカリンを捕えることに成功し、ユニコーン号に隠された謎を明かす。
エルジュの『タンタン』を言わば原作の雰囲気のまま、3Dの映像に確実に定着させているところがまずすごいが、原作のどちらかと言えば静的なコマとコマの間から壮絶なアクションを引っ張り出して、それをめまぐるしいまでの勢いでスクリーンにはじけさせているところがまたすごい。そしてアクションの一つひとつがきわめてスピルバーグ的であり、実写の文脈では困難であったことを『タンタン』およびそのアニメーションというフィルターをかけることで、言わば実写的文脈を振り落とし、おおむねにおいて簡略化された状況を背景に思うがままにアクションに専念しているという気配がうかがえて、つまりここに至って初めて、スピルバーグがスクリーンで本来したかったことを目撃しているのだと実感する。あまりのめまぐるしさに少々疲れたことは事実だが、この監督の仕事を語る上ではきわめて重要な作品である。 

Tetsuya Sato