2016年5月14日土曜日

ヘイル、シーザー!

ヘイル、シーザー!
Hail, Caesar!
2016年 イギリス/アメリカ/日本 106分
監督・脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

1954年、ハリウッドの映画製作会社で製作者をしているエディ・マニックスが昼夜を問わずに動いて配下にある俳優を醜聞からかばい、製作の進行に気を配り、教会を訪れては告解を繰り返していると製作進行中の大作『ヘイル、シーザー!』の主演俳優ベアード・ウィットロックが何者かに誘拐され、身代金の要求がおこなわれ、犯人は何者かといぶかっていると脳味噌が筋肉でできているとしか思えない西部劇俳優から意外にも筋のとおった指摘を受け、それはそれとしても大作の製作をとめるわけにはいかないので身代金の準備にかかり、それやこれやであわただしいところへゴシップ記者が現われてベアード・ウィットロックの古い醜聞をすっぱ抜くと予告する。 
エディ・マニックスがジョシュ・ブローリン、ほぼヴィクター・マチュアなベアード・ウィットロックがジョージ・クルーニー、いきなり上流社会系ドラマの主演に抜擢されて激しく戸惑う西部劇俳優がオールデン・エアエンライク、その映画の監督がレイフ・ファインズ、並行して撮影が進んでいる水中レビューものの清純派女優がスカーレット・ヨハンセン、その女優に紹介される「プロの人間」がジョナ・ヒル、ゴシップ記者がティルダ・スウィントンとティルダ・スウィントン、映画編集者がフランシス・マクドーマンド、クリストフ・ランベール扮する見るからにいかがわしい(北欧系)監督が監督している水兵ミュージカルの主演がチャニング・テイタム、ナレーターがマイケル・ガンボン。
多様な出演陣が実にすばらしく消化されていて、続々と登場する劇中映画の露骨なまでに五十年代的なそれっぽさと微妙なひねり加減がまたすばらしい。序盤には絵に描いたような宗教論争が放り込まれ、そのいかがわしさは中段、わらわらと湧いてくるコミュニストの群れに継承され、それがエディ・マニックスが見上げるゴルゴダの丘のセットに引き継がれ、そしてコミュニストの犬エンゲルスはコミュニストたちの足にじゃれつき、いささか唐突ではあるがコミンテルンの資金は水中に消える。人工的で、胡散臭くて、とてつもなく退廃した作品であり、最初から最後までにまにまと笑みを浮かべながら鑑賞した。 

Tetsuya Sato