2016年5月25日水曜日

トポス(185) ミュンは真理に近づいていく。

(185)
「予言が成就しつつある」とミュンが言った。「邪悪な黒い力は封印されたが、邪悪な黒い力それ自体は国家という概念を通じてすでに普遍化されていた。国家という概念自体が邪悪な黒い力と一体化していた。わたしは弁証法的直感によって上部構造の破壊を計画したが、この計画で必要としていたのは一見近代化された理念ではなく、徹底的に自然法的な欲求であったということに、すべてが終わってから気がついた。人間の本性からすれば国家は不要な存在であり、人間の本性に反して収奪と抑圧をもたらす邪悪な存在にほかならない。人間の自由と尊厳を取り戻すためには、改革の手を休めてはならない。わたしはエルフの森で木を伐り倒しながら、また一歩真理に近づいた。朝の四時から夜の十時まで木を伐り倒しながら、わたしは真理に近づいていった。不潔な食堂で魚の目玉が浮いた塩からいスープをすすり、いったいどうやってこれほどの数の魚の目玉を集めてくるのかといぶかりながら、わたしは真理に近づいていった。そして言うまでもなく、真理は共有されなければならなかった。わたしは作業班員に改革の必要を訴え、作業班員は改革に賛成した。わたしは隣の作業班にも改革の必要を訴え、隣の作業班も改革に賛成した。わたしは夜のあいだにバラックで改革の必要を訴え、バラックの全員が改革に賛成した。わたしは自主警備班にも改革の必要を訴え、自主警備班も改革に賛成した。わたしは武装警備班にも改革の必要を訴え、武装警備班も改革に賛成した。わたしは収容所管理当局にも改革の必要を訴え、収容所管理当局も改革に賛成した。森林収容所とその管理下にあるすべての収容地点が真理を共有し、改革の必要を痛感した。予言が成就しつつある」とミュンが言った。

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