2016年4月29日金曜日

トポス(169) 所長がギュンを批判する。

(169)
 突撃するロボット軍団の頭上に身長八十メートルの巨人が飛来した。巨人はロボット軍団と王宮のあいだに着地するとロボット軍団に向かって身構えた。腰をわずかに落としてデュワっと叫び、左右の手首を交差させるとそこから白熱する光線を放った。ロボット軍団は壊滅的な打撃を受け、算を乱して潰走した。
「ギュンの介入は、もちろん予測しておくべきだった」と所長は言った。「作戦成功まであと一歩というところで巨大化して現われて邪魔をして、わたしのロボット軍団を壊滅させたのだ。なぜそんなことをしなければならないのか。わたしは理由を知っていた。わたしはギュンをよく知っていた。本人は理性的な人間のつもりでいるが、ギュンを動かしているのは嫉妬心だ。わたしが救いの手を差し伸べなければ、ギュンは刑務所の不潔極まりない独房で朽ち果てていたはずだった。わたしが手を差し伸べて文明世界に連れ戻してやったというのに、ギュンが心に抱いたのは感謝ではなく嫉妬だった。わたしが精一杯に手間をかけて作戦を成功に導こうとしていると、またしても嫉妬心に突き動かされて飛び込んできた。他人がうまくやっていることを、ギュンは許すことができないのだ。許すことができないどころか、自分の成功が奪われていると思い込むのだ。わたしはロボット軍団に退却を命じた。安全圏まで退却させて、そこで再編成をおこなった。全軍に目標の変更を伝達した。人類抹殺の使命に変更はなかったが、その前にまずギュンを倒さなければならなかった。ロボット軍団は捕虜を取らない。見つけ次第、殺せと命じたことは言うまでもない」

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