2016年4月10日日曜日

トポス(153) ネロエは邪悪な黒い力の存在を感じる。

(153)
 野戦軍法会議は邪悪な黒い力の審理を放棄し、裁判なしの銃殺を決定した。執行の命令がただちに下され、壁の割れ目は兵営の中庭にある煉瓦の壁の前に移された。整列した銃殺隊が銃を構えた。指揮官の命令でいっせいに発砲した。銃殺隊の指揮官はとどめを刺すためにダイナマイトを割れ目に押し込み、壁を完全に破壊した。クロエがまず報告を受け、クロエがネロエに報告した。だがネロエは静かに首を振った。
「邪悪な黒い力を銃弾や爆薬で滅ぼすことはできません。わたしは感じます。邪悪な黒い力はまだどこかにひそんでいます。わたしはそれを感じるのです」
 電話が鳴り、クロエが取った。
「あなたに」
 クロエが受話器を差し出した。
「誰から?」
 ネロエが受話器を耳にあてた。
「わたし、邪悪な黒い力は言う」電話の向こうから邪悪な黒い力の声が響いた。「銃弾や爆薬でわたしを滅ぼすことはできない。おまえたちはわたしの居場所を破壊しただけだ。わたしが内省のために自ら選んだ抑圧を、愚かなおまえたちがダイナマイトで爆破したのだ。居場所を失ったことで、わたしは視界の広がりを得た。内省と抑制を失い、自分の力を確信した。そこでわたし、邪悪な黒い力は言う。おまえたちはわたしによって滅ぼされる。わたしから内省と抑制を奪った罰としてではなく、わたしの強大で、気ままな力によって、ただ楽しみのために滅ぼされる。おまえたちに逃げ場はない。運命を受け入れ、残された時間で自分を憐れむがいい」
 電話が切れて、もう一度鳴った。ネロエが取った。受話器から悲鳴と銃声と爆音が聞こえた。ネロエは音に耳を傾け、受話器を置いて首を振った。クロエがたずねた。
「何があったの?」
「兵士たちが突然オークに変身したそうです。重火器で武装していて、抑えることができません」

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