2016年4月25日月曜日

トポス(165) ミュンがギュンを批判する。

(165)
「シロエは狙撃に失敗した」とミュンは言った。「狙撃の名手で、優れた暗殺者であるシロエが失敗した。わたしはシロエの報告を聞いて驚いた。状況にギュンが介入していたのだ。もちろんシロエはギュンを知らないが、スキンヘッドにサングラスの不気味な中年男と言えばギュンに間違いない。ギュンがわたしの邪魔をしていた。そのせいでシロエは任務をしくじり、革命派の精鋭部隊が大損害をこうむった。なぜそんなことをしなければならないのか。わたしは理由を知っていた。わたしはギュンをよく知っていた。本人は理性的な人間のつもりでいるが、ギュンを動かしているのは嫉妬心だ。かつてわたしが成功していたとき、ギュンは嫉妬心で動いてすべてを台なしにした。わたしが精一杯に手間をかけて革命を成功に導こうとしていると、またしても嫉妬心に突き動かされて飛び込んできた。他人がうまくやっていることを、ギュンは許すことができないのだ。許すことができないどころか、自分の成功が奪われていると思い込むのだ。ヒュンが作られた怪物だとすれば、ギュンは生まれついての怪物だ。怪物的な革命の敵だ。ギュンを放置しておくことはできなかった。幸いなことにわたしはギュンの写真を持っていた。それを大量に複製して革命派の全員に配り、拡大してポスターにして町のいたるところに貼り出した。そしてギュンこそが人民の敵であり、革命の敵であると覚醒した労農大衆に訴えた。見つけ次第、殺せと指示したことは言うまでもない」

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