2015年9月23日水曜日

クーデター

クーデター
No Escape
2015年 アメリカ 103分
監督:ジョン・エリック・ドゥードル

テキサス州オースティンで事業を失敗させたジャック・ドワイヤーは水資源会社の中間管理職の職を得てベトナムの隣にある東南アジア某国へ妻と娘二人の家族を連れて赴任するが、ホテルに着いても会社とは連絡できない、テレビには何も映らない、インターネットも使えない、という状態で、翌朝、情報を求めて外へ出ると警官隊と暴徒の衝突に出会い、巻き込まれそうなところをどうにか逃げ出してホテルに戻るとホテルはすでに暴徒に占拠されていて、しかもアメリカ人が殺害されている現場に出くわし、自分自身も追われるので非常階段を伝ってホテルに入って家族を集め、見たところ場慣れしているイギリス人ハモンドの勧めにしたがって屋上へ逃れると暴徒のヘリコプターが飛来して小銃を乱射し、しかも暴徒は水資源会社を目の敵にしていてジャック・ドワイヤーの顔も知っているということが判明し、そこでジャック・ドワイヤー脅える妻子を急かして隣のビルの屋上に逃れ、夜を待ってからアメリカ大使館を目指して移動を始める。 
ジャック・ドワイヤーがオーウェン・ウィルソン、ところどころに顔を出す謎の男ハモンドがピアース・ブロスナン。オーウェン・ウィルソンとその一家の恐ろしいまでにドメスティックなアメリカ人ぶり、ピアース・ブロスナンの東南アジア浪人ぶりはよくできている。しかしベトナム国境からわずか三キロという、逃げ出すのにきわめて都合のいい場所に設置された某国首都を制圧するのは軍隊ではなくてクメール・ルージュのイメージをまとった暴徒であり、いったいどこから出てきたのか、首都を24時間足らずで制圧してアメリカ大使館まで壊滅させられる暴徒にリアリティはかけらもない。いちおう理由は説明されているものの、実際のところは政治的な背景などまるでなくて、オースティンのアメリカ人一家に第三世界的な恐怖を体験させるためだけに出現したものと思われる。そしてオースティンのアメリカ人一家が味わう恐怖はそれなりに恐ろしいものではあるものの、暴徒の矛先が支離滅裂な上に演出が単調なので見ているうちに少々うざくなってくる。趣向を変えたホラー映画なので比べることに意味はない、という気もしないでもないが、仮にホラー映画であるとしてもジョン・ブアマンの『ラングーンを越えて』などには及ばない。
Tetsuya Sato