2015年9月13日日曜日

ナイトクローラー

ナイトクローラー
Nightcrawler
2014年 アメリカ 118分
監督:ダン・ギルロイ

いちおう就業の意欲を持ちながら小口の窃盗、小口の強盗などをして糊口をしのいでいる男ルイス・ブルームはあるときたまたま交通事故の現場に出くわして、そこでニュース番組用にスクープ映像を撮影している男たちに出会い、そのような職業があることを知り、そのような職業のためになにが必要であるかを知り、そこで海岸に出て自転車を盗むと故売屋に持ち込んでカメラと警察用無線を手に入れて、夜のロサンゼルスの町をスクープ映像を求めて走り回り、遂に銃撃事件の被害者の映像を手に入れるとローカルニュース局に持ち込んで小銭をせしめ、これは商売になると確信すると仕事に熱を入れて助手も雇い、とめどのない自尊心から商売仲間を商売敵に読み替え、その商売敵にスクープ映像を奪われると陰険な復讐をし、利益を出して車も買い替え、カメラも買い替え、強盗殺人の現場で決定的なスクープ映像を手に入れると一部を売って犯人に関わる映像を秘匿し、自分で犯人の所在をつきとめると事件が起こるように誘導してスクープ映像をものにして、企業家としてステップアップする手がかりをつかむ。 
ルイス・ブルームがほぼまばたきをしないジェイク・ギレンホール、ニュース局の深夜枠ディレクターがレネ・ルッソ、パパラッチの同業者がビル・パクストン。
ジェイク・ギレンホールが良心を欠いた人間を怪演しているが、わたしの認識としてはそもそもこのような職業に就いている人々はおおむねこのようなものであろう。ここにあるのはニュースとリアリティショーの区別を見失ったメディアの無分別ではあっても、個人の無分別ではなく、ルイス・ブルームはたまたま適職を見つけて、それを成功させたに過ぎない。ジェイク・ギレンホールが気味の悪い演技をしているのは事実だが、『GTA V』に登場するパパラッチほど愚かでもないし狂ってもいない。狡猾ではあるが、度を超えてというわけでもない。主人公の弁明を聞いていると自己啓発本による学習効果がある意味で「客観主義」的な行動形式を生み出し、同時に良心の欠如も生み出しているという見方もできるような気もするが、映画自体はおそらくこの主人公のキャラクターの構築にすべてがあって、なにか一般的な指摘を意図したつもりはないだろう。主人公はきわめて単純に悪役であり、その悪役ぶりの簡潔で明快な表現は卓越している。夜間撮影は非常にクリアで、演出は緊張感をうまく引き出している。 



Tetsuya Sato